2016.10.01 不易流行
「不易流行」

 「ふえきりゅうこう」と読みます。「不易」とは「その本質が永遠に変わらないもの」を意味します。「易」という言葉が「変わる」という意味ですので、それを打ち消して「変わらない」となるのですね。古今不易や千古不易という四字熟語もありますよ。そういえば「フエキ糊(のり)」ってご存知でしょうか?大阪の文具メーカーが1898年に発売して以来のロングセラー商品なのですが、この「フエキ」も「不易」です。つまり「永遠に変わらない」品質を誇るという自信の表れがブランド名となったのですね。キンモクセイの香料で香り付けされた「フエキ糊」は、田中が幼いころに熱中した「紙工作」に欠かせないアイテムとして、その香りとともに思い出をよみがえらせてくれます!オイルショック後の昭和の時代ですね。雑誌の付録といえば、紙を切ったり貼ったりで作り上げる「工作」が主流だったのですよ。話がそれました。一方の「流行」は、お馴染みの熟語ですよね。「時代とともに変化するもの」を意味することはご承知の通りです。それでは、この相反する意味の熟語を組み合わせることで形成された「不易流行」という四字熟語は、一体どのような意味を生み出そうという意図が込められているのでしょうか?
 ここで「不易流行」という用語の生みの親である人物を紹介してみましょう。その人物とは、皆さんもよく知る江戸時代の俳人、松尾芭蕉なのです。芭蕉によれば、「不易」と「流行」は本質的に対立するものではなく、真に「流行」を得ればおのずから「不易」を生じ、また真に「不易」に徹すればそのまま「流行」を生ずるものだ、というのです。どういう意味でしょうか?俳句は「世界一短い文学」とも言われています。たった十七音で詩を形づくるワケですから。それを文学作品として成立させるためには、絶えず新しい句材を求め、新しい表現を心掛けなければなりません。気を抜けばすぐに陳腐で類型的な句しか得られなくなってしまいます。そうした危険性を意識して、絶えず新しさを追求して行くことが「流行」といわれる中身になるのです。「流行」を追うことが俳句という文学=「不易」を生み出すのです。一方「不易」とは、俳句として存立する不変の条件のことです。五七五の十七音形であること、季語の存在、「切れ字」と呼ばれる表現技法など、いくつかの原則を不変の鉄則として維持しなくては、俳句ではなくなってしまいます。俳句を俳句たらしめるアイデンティティーと言ってもいいでしょう。この「不易」である俳句の形式によって「流行」を表現することが可能になるのです。
 「あれもいいな」「これもいいいな」といっては新しいものを追い求める「流行」だけではなく、「これがいい」「これで間違いない」という伝統に根付いた「不易」を意識しなくてはなりません。別の四字熟語を使って表現するならば、それは「温故知新」ということでもあります。よき伝統を守りながら=「不易」、進歩に目を閉ざさない=「流行」、ということ。そうすることではじめて理想が追求されるのだと芭蕉は言います。歴史を踏まえること=「不易」、そして現実を踏まえること=「流行」。そのことによって、未来を思考することが可能になるのだと。
 私も、「新」を求め続け=流行、「古」を顧みる知恵=「不易」を失わないように、学び続けていきたいと思います!
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