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2017.01.06
君子豹変
「君子豹変」
「君子は豹変す」という使い方をする慣用表現ですが、教え子にこの言葉の意味を確認したところ…本来の意味とはかけ離れた「トンデモ」イメージで理解してしまっているケースが大変多いという事実に直面いたしまして(汗)。急きょ、解説をしてみようと思い立ったわけです。
「王様みたいに偉い人は、突然キレて、豹みたいに怒りまくる!」という暴君のイメージを思い描いている生徒が目立ちましたが、全部(笑)間違っています。そもそも「君子」を「君主」と勘違いしてしまっていますよ。「君主」は確かに、「世襲によって位につく統治者」のことですが、ここでは「君子」ですよ、「君子」。王様ではありません。「徳が高く品位のある人格者」を意味する言葉なのです。「君子は危うきに近寄らず」という表現を聞いたことがあるでしょう?人格者と呼ばれる人物は、身をつつしみ守って危険をおかさずにこれを避ける、という意味ですね。ついでに確認しておきましょう。「聖人君子」という四字熟語も知っておいて下さい。「学識、人格ともに優れた理想的な人物」という意味になりますからね。
さらに「豹変」については、「豹に変身する」という文字通りのイメージで、おとなしかった人が豹のように獰猛(どうもう)に一変する、という理解を示している生徒が多く見受けられました。これも間違いです。「気弱なウサギから猛々(たけだけ)しい豹に変身!」といったようなメタモルフォーゼを意味しているのではなく、「豹変」とは、「豹の斑紋(はんもん)が、季節の変わり目に抜け替わって、美しく一変する」という意味ですからね。決して「豹に変身する」わけではないのです。
「でも先生、意味はそんなに間違っていないんじゃないですか?」と、粘る生徒もいます。「立派な人でも機をみて態度や考えを安易に変える」とか「突然、本性を現して恐ろしい人物に一変する」といった、否定的な意味で使われること自体は、イメージしている通りではないですか?という意見ですね。確かに、辞書にも次のような文例が出ています。
「君子豹変す、というが、あの男の変わり身の早さには感心するよ」。明らかに否定的な意味合いですね。態度を一変させることに対して、あきれている様子です。ところが、辞書には次のような説明が続くのです。「誤用が定着したもの。今では誤りとは言い切れないが、本来の意味からは遠い」と。さてこれは、一体どうしたことでしょう。
とにかく本来の意味を確認してみましょう。そもそもこの言葉は、中国の古典『易経』の「君子は豹変す。小人は面を革(あらた)む」に由来するものです。徳のある君子はすばやくはっきりと誤りを正すが、徳のない人は外面だけを改める、という指摘なのです。「徳のある人」の態度と、「徳のない人」の態度を対比させて、「過ちを速やかに改めること」を評価して、肯定的にとらえているものだったのですよ!英訳するとこの意味がはっきりと理解できます。‘A wise man changes his mind, a fool never.’お分かりでしょうか。「愚か者は決して改めない」というところが実はポイントなのです。
ですから本来は、『論語』の中に登場する「過ちては改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」という言葉にも相通じるところがある表現なのですが、教え子たちが否定的なニュアンスでとらえているように、最近では特に、節操なく変わり身が早い、という悪い意味で用いられるようになっています。もしかしたらそれは、豹という動物の凶暴なイメージの連想からきたものなのかもしれません。辞書による説明でも「もとは、よい方への変化を言ったが、今は前言を平気でがらりと変えるなど、悪い方を言うことが多い」と、最近のとらえ方をわざわざ紹介しているほどです。
皆さんにあらためて確認してもらいたいのは、この「よい方への変化」という意味合いです。本当にひとかどの人物であれば、変化や改革を恐れはしません。必要があれば、あるいは過ちと分かれば、がらりとやり方や態度を変えるということもあるのです。ところが、小人は、表面上はそれを受け入れるそぶりをしつつも、旧来のやり方や面子にとらわれて、古いやり方や一度口にした自説にこだわってしまう。思い当たる節はありませんか?「こんなやり方ではダメだ」とうすうす気づいていながら、根本的に変えてしまうこと自体を恐れて、「とりあえず今のままでいいや」と決断を先延ばしにしてしまう…。結果の出ていないやり方にもかかわらず、「今までこれでやってきたから」と惰性で続けてしまう…。どうでしょう、身につまされることはないですか?変える!という決断には、どうしても勇気が必要になりますからね。
人は意見がぶれる人のことを信用しないものですが、意見を変えるなら変えるで、はっきりと表明すれば理解されることもあるのです。ところが、言を左右にして誤魔化そうとするから信用されなくなってしまうのです。日本の政治家が信用されないのは、まさにそのためですよね。意見を変えるときには、勇気を持って徹底的に変えることも極めて重要なのですよ!
「君子は豹変す」という使い方をする慣用表現ですが、教え子にこの言葉の意味を確認したところ…本来の意味とはかけ離れた「トンデモ」イメージで理解してしまっているケースが大変多いという事実に直面いたしまして(汗)。急きょ、解説をしてみようと思い立ったわけです。
「王様みたいに偉い人は、突然キレて、豹みたいに怒りまくる!」という暴君のイメージを思い描いている生徒が目立ちましたが、全部(笑)間違っています。そもそも「君子」を「君主」と勘違いしてしまっていますよ。「君主」は確かに、「世襲によって位につく統治者」のことですが、ここでは「君子」ですよ、「君子」。王様ではありません。「徳が高く品位のある人格者」を意味する言葉なのです。「君子は危うきに近寄らず」という表現を聞いたことがあるでしょう?人格者と呼ばれる人物は、身をつつしみ守って危険をおかさずにこれを避ける、という意味ですね。ついでに確認しておきましょう。「聖人君子」という四字熟語も知っておいて下さい。「学識、人格ともに優れた理想的な人物」という意味になりますからね。
さらに「豹変」については、「豹に変身する」という文字通りのイメージで、おとなしかった人が豹のように獰猛(どうもう)に一変する、という理解を示している生徒が多く見受けられました。これも間違いです。「気弱なウサギから猛々(たけだけ)しい豹に変身!」といったようなメタモルフォーゼを意味しているのではなく、「豹変」とは、「豹の斑紋(はんもん)が、季節の変わり目に抜け替わって、美しく一変する」という意味ですからね。決して「豹に変身する」わけではないのです。
「でも先生、意味はそんなに間違っていないんじゃないですか?」と、粘る生徒もいます。「立派な人でも機をみて態度や考えを安易に変える」とか「突然、本性を現して恐ろしい人物に一変する」といった、否定的な意味で使われること自体は、イメージしている通りではないですか?という意見ですね。確かに、辞書にも次のような文例が出ています。
「君子豹変す、というが、あの男の変わり身の早さには感心するよ」。明らかに否定的な意味合いですね。態度を一変させることに対して、あきれている様子です。ところが、辞書には次のような説明が続くのです。「誤用が定着したもの。今では誤りとは言い切れないが、本来の意味からは遠い」と。さてこれは、一体どうしたことでしょう。
とにかく本来の意味を確認してみましょう。そもそもこの言葉は、中国の古典『易経』の「君子は豹変す。小人は面を革(あらた)む」に由来するものです。徳のある君子はすばやくはっきりと誤りを正すが、徳のない人は外面だけを改める、という指摘なのです。「徳のある人」の態度と、「徳のない人」の態度を対比させて、「過ちを速やかに改めること」を評価して、肯定的にとらえているものだったのですよ!英訳するとこの意味がはっきりと理解できます。‘A wise man changes his mind, a fool never.’お分かりでしょうか。「愚か者は決して改めない」というところが実はポイントなのです。
ですから本来は、『論語』の中に登場する「過ちては改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」という言葉にも相通じるところがある表現なのですが、教え子たちが否定的なニュアンスでとらえているように、最近では特に、節操なく変わり身が早い、という悪い意味で用いられるようになっています。もしかしたらそれは、豹という動物の凶暴なイメージの連想からきたものなのかもしれません。辞書による説明でも「もとは、よい方への変化を言ったが、今は前言を平気でがらりと変えるなど、悪い方を言うことが多い」と、最近のとらえ方をわざわざ紹介しているほどです。
皆さんにあらためて確認してもらいたいのは、この「よい方への変化」という意味合いです。本当にひとかどの人物であれば、変化や改革を恐れはしません。必要があれば、あるいは過ちと分かれば、がらりとやり方や態度を変えるということもあるのです。ところが、小人は、表面上はそれを受け入れるそぶりをしつつも、旧来のやり方や面子にとらわれて、古いやり方や一度口にした自説にこだわってしまう。思い当たる節はありませんか?「こんなやり方ではダメだ」とうすうす気づいていながら、根本的に変えてしまうこと自体を恐れて、「とりあえず今のままでいいや」と決断を先延ばしにしてしまう…。結果の出ていないやり方にもかかわらず、「今までこれでやってきたから」と惰性で続けてしまう…。どうでしょう、身につまされることはないですか?変える!という決断には、どうしても勇気が必要になりますからね。
人は意見がぶれる人のことを信用しないものですが、意見を変えるなら変えるで、はっきりと表明すれば理解されることもあるのです。ところが、言を左右にして誤魔化そうとするから信用されなくなってしまうのです。日本の政治家が信用されないのは、まさにそのためですよね。意見を変えるときには、勇気を持って徹底的に変えることも極めて重要なのですよ!
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