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「開いた口がふさがらない」

 あまりにもあきれると、ぽかんと口を開いた状態のまま一言も言葉を発しなくなることから、「相手の行動・態度に、あきれかえってものが言えない様子」を表す慣用表現になりますね。ところが先日、こんな用例に出くわして驚いた次第です。「イチロー選手のレーザービームのような送球は開いた口がふさがらないほど素晴らしかった」というものです。これが教え子の作文だというのなら「キミキミ!間違っているよ。イチロー選手の活躍にあきれているワケではないでしょ?」と注意すればすむのですが…大手新聞社の記事なのですよ、コレが。気になったので調べてみたのですが、確かに次のような説明もありました。「どちらかというと、悪いことを嫌ったりする場合に使われるようですが、いい意味でも使われるようです」と。それでもやはり一般的には、「あきれかえってものも言えない」というニュアンスですから、ほめ言葉にはしない方が無難だと思いますよ。
 実はこの「イチロー選手」の話、もとは英文だったのですよ。日本語訳として掲載されていたのが先ほどの文なのです。ニューヨークヤンキースで活躍する日本人大リーガー「鈴木一郎選手」を紹介した記事にこんな箇所があったのです。
Ichiro Suzuki’s laser-beam-like throwing was jaw-dropping. 
 このjaw-droppingという英語の慣用表現を「あいた口がふさがらない」という日本語の慣用表現に翻訳していたのですね。英語のjawは「あご」という意味です。平和なビーチを襲う巨大人食いザメ(ホオジロザメ)の恐怖と、それに立ち向かう人々を描いた映画に『Jaws(ジョーズ)』がありましたね。スティーヴン・スピルバーグ監督作品です。大きな「上あご」と「下あご」を合わせて噛み付くワケですからJawsと複数形になるのですね。その「あご」がdropping「落ちてしまうような」、驚きを表す慣用表現となります。落ちるのは「上あご」ではなく「下あご」だけでしょうから、ここでは単数形となっているのですね。
 英語のニュアンスをそのまま伝えるのであれば、あえて日本語の慣用表現を使わずとも「イチロー選手のレーザービームのような送球には下あごが落ちるほど驚かされた」でもいいと思いますよね。十分にその驚嘆ぶりが伝わってきますから(笑)。
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