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2017.11.04 八方美人
 「八方美人」

 「誰からも悪く思われないように、要領よく人とつきあっていく人」を指して使われる表現です。「悪く思われないよう」「要領よく」といった言い方からも推測できるように、ほめ言葉として使われることはありません。「あの人は八方美人だから」と言った場合には、「本心では何を考えているのか分からない、信用できない人物だ」といった意味合いが込められています。
 私にはこの四字熟語にまつわる大学時代の思い出があります。東京大学には入学時に決まる「クラス」があります。一・二年生の間は「教養課程」といって、専門に関係なく幅広く学識を深めるというシステムが採用されていることから、クラス単位で同じ語学の授業を受講したりするのです。ですから、ホームルームこそありませんが、同じクラスのメンバーで一緒に行動することが多く、大学を卒業してからも「同級生」として仲がいいのです。ちなみに私は文Ⅲ8組。フランス語を第二外国語として選択したクラスでした。
 そのクラスに、いわゆる「マドンナ」がいました。80年代の美人を形容するのに「きりりと太い眉」というフレーズがありますが、まさにそれ(笑)。十代や二十代の皆さんには理解できない表現だと思いますので、お父さん・お母さんに聞いてみてくださいね。クラスの男子の憧れの存在である彼女の名前は、Kさんといいまして、現在はNHKのアナウンサーとして活躍されています。
 ある時、同級生の一人(M君といいます)が私に向かってこう言ったのでした。「Kさんって八方美人だよな」。それに対して私は「確かに人当たりは良いけど、八方美人というのは違うんじゃない?」とこたえたのですが、さらにM君は「いや、どこからどう見ても八方美人に違いない!」と言ってゆずらないのでした。「そうかな?そんなに計算ずくで人に接しているようには見えないけど…」と私が告げたときのM君のキョトンとした顔が今でも忘れられません。
 皆さんはもうお分かりですよね。そう、M君は八方美人を文字通り「四方八方どこから眺めても完璧な美人」(M君の発言)という意味で使っていたのです。確かに元々の意味は「どの方向からみても難のない美人」ですので、「言葉の本来の意味でKさんは八方美人だね」という言い方をすれば、問題はないのですが…。東大生といっても様々です。数学は得意だけれど国語は苦手という学生も一定の割合で存在するのです(笑)。
 ちなみにM君も現在は渋谷の都市計画に関わる重要なポストに就いて活躍しています!