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 「プログラミング」

 「先生!eスポーツで入試が行われるようになるのでしょうか?」教え子君が突拍子もない質問をぶつけてきました。eスポーツというのは「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略称で、コンピューターゲームやビデオゲームを使ったスポーツ競技のことを指します。スポーツというとアスリート(身体運動に習熟している人)を思い浮かべるかもしれませんが、要は複数のプレイヤーで対戦するゲームをスポーツだと解釈してeスポーツと呼んでいるのです。アメリカではすでに、国がeスポーツをスポーツとして認めており、プロゲーマーがスポーツ選手であることも認められています。
 「世界的なゲームメーカーがある日本なのに、まだまだeスポーツの認知度は低いよね。世界からはeスポーツの後進国と呼ばれているくらいだから。いきなり入試に登場することはないと思うよ」と、答えたものの面白い視点だと感じたのでした。現に、早稲田大学の自己推薦入試では、卓球で活躍した生徒や囲碁で活躍した生徒が合格を果たしています。ですからeスポーツで活躍した生徒が合格するのもそれほど遠い未来の話ではないように思えるのです。
 「でも、学校の授業でやることが決まったと聞いたので、授業でやるなら入試にも出るかなと思って」と教え子君は続けます。驚いた私は「教育現場にeスポーツ導入だって!一体どこの自治体の話なの、それは?中高生の放課後の居場所づくりという事業では、多人数で遊べるビデオゲームを導入して成果を上げたという話を聞いたことがあるけれど、あくまで学校外の話だよ。授業でやるってどこで聞いたの?」と逆に質問してしまいました。「中学校の授業で必修化されるって…」「ああ、それはプログラミング教育のことだよ!」
 教え子君は「プログラミング教育必修化」という情報に何らかのメディアで接する機会があったのでしょう。もしかしたらその際にニュース映像で「コンピューターの画面に向かう生徒」というシーンでも目にしたのかもしれません。そこで自分なりの解釈として「学校でコンピューターをさわってゲームをする授業」というイメージをふくらませたのでしょう。でも、もちろんプログラミング教育はコンピューターゲームをする授業ではありませんからね。
 プログラミングとは「プログラムを設計すること」であり、プログラムとは「コンピューターに対する指示」のことです。プログラミング教育とは、コンピューターが情報を処理するためのプログラムを設計することで、論理的な思考力・創造力を身につけることを目的とした教育なのです。文部科学省は新しく改訂された学習指導要領で、2021年から中学校のプログラミング教育必修化を決定しています。「じゃあ先生、プログラマーをみんなで目指すのですか?」eスポーツとかプログラマーとか、言葉はよく知っている教え子君です。プログラミング教育のねらいは「プログラマー(プログラミングを行なう人)」の育成ではありません。「プログラミング的思考」を養うことなのです。文部科学省では「プログラミング的思考」を次のように定義しています。「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」であると。プログラミングによって学べる力は「論理的思考力」「自発的な学習能力」「問題解決力」であるといわれています。プログラムは、処理手順に沿って作業しなければエラーが発生してしまいます。エラーが発生した場合には、なぜエラーが発生したのか原因を探り(論理的思考力)、対処方法を自分で考えなくてはなりません(問題解決力)。その際、自ら調べることが必要となるため(自発的な学習能力)、プログラミングは教育内容として優れているというわけです。「ということは、プログラミングが入試に出るようになるのですね!」と教え子君。
 今回の学習指導要領の改訂では確かに「プログラミング教育の必修化」が打ち出されましたが、それは「授業で扱う題材として必ず取り上げるように」という意味で、「科目」として独立するわけではありません。文部科学省が提示している「モデル授業」でも、様々な学年での取り組みが示されていますが、何年生で取り上げても構わないという扱いですので、学校によっては扱う学年が違ってくるのかもしれません。科目ではありませんので、高校入試での「受験科目」になることも、現時点ではないと考えられますよ。
 授業のスタートに向けて、各学校では「外部の専門家を招いて担任の先生への講習会」が盛んにおこなわれています。私の友人も、都内の学校に講演に出向いています。どんな内容を話したのか聞いたところ「ゴール(目的)から逆算して、何をすべきなのかを考えることのできる」思考法を身につけさせることが重要だ、ということだそうです。コンピューターをいじれる、というイメージが先行していますが、そうではないオーソドックスな「思考法」についての教育になりそうだ、とのことです。eスポーツはゲームの操作や戦略を競うものですので、プログラミング教育とは直接的には関係してこないですが、「面白いゲームをつくるという目的のためには、どんな工夫が必要なのか」といったプログラミングの導入に、ゲームが取り入れられることは大いにありうると思いますよ