| Home |
2020.05.07
不要不急
「不要不急」
新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、わずか数か月ほどの間にパンデミックといわれる世界的な流行となっています。日本でも新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言が政府より発令されました。東京都からは都民に対して「不要不急の外出を控える」といった要請がなされています。小中学生にとっても、友達の家に行くことや屋外で一緒に遊ぶことも、避けるよう求められることになります。「家で過ごそう(Stay Home)」という呼びかけのもと、感染拡大防止のため、通院・食料の買い出しなどといった「生活の維持に必要」な場合を除き、原則として外出を自粛しようということになっています。
「不要不急」という四字熟語を少し考えてみましょう。「不要」は「必要でない」、「不急」は「急ぎではない」、という意味になりますよね。「不要」の反対語は「必要」だとわかりますが、「不急」の反対語はなんでしょうか?「急がなければならない」という意味の熟語ですよね。それは「至急」(非常に急ぐこと)や「火急」(急を要すること)になるでしょう。四字熟語としてはこなれていないのですが、無理やりくっつけると「至急必要」というように「不要不急」の反対語をつくることができるかもしれません。
「家でどうやって過ごせばいいですか?」という相談を受けることも多いのですが、「勉強してください」という回答以外を期待されているのでしょうね(笑)。こんなときには歴史に学びましょう!時は14世紀、場所はイタリアのフィレンツェです。ヨーロッパでは「黒死病」といって恐れられた感染症ペストが蔓延していました。その最中、都会での接触を避けるため、郊外の別荘にこもることにした男女10人がいます。命が脅かされている不安を振り払おうと、10人はそれぞれ毎日1つずつ物語を語り始めます。それが10日間続いて全部で百の物語がつむぎだされるというお話です。ルネサンス期を代表する文学者であるジョヴァンニ・ボッカッチョの著書『デカメロン』の内容になります。「デカメロンって、あれですか?」ききたいことはわかります。日本の各地に「巨大なメロンパン」を販売するパン屋さんが存在しますからね。もちろん「でかい」でも「メロン」でもありませんよ。デカメロンはギリシャ語の「10日」に由来する言葉なのです。
日本に先立って緊急事態宣言が出されたイタリアでは、このボッカッチョの『デカメロン』を読み直してみよう、という動きが広がっています。きっかけは「昔の人達はこんなときどうしていたのだろうか?」という問いかけからだそうです。「全部封鎖されてしまった。どこにも行けない。でも毎日の忙しさの中で、思うようにできなかったことに時間を割くことができる。もしかしたらそんなに悪いことでもないのかもしれない」と、不安の中でもできることを一つずつ始めようとしているイタリアの人たちの声が、インターネット上では聞こえてきます。
皆さんにもぜひ「古典を読む」というチャレンジを始めてほしいと思います。そしてこうした状況の中、世界中で売上げが増加しているという「古典」があることをご存知でしょうか?古典といっても、発表されたのは1947年ですから今から73年前になります。「まるで現在の状況を予言しているかのようだ」と話題になっているその著書のタイトルは『ペスト』といいます。ペストという感染症に翻弄されながらも、その脅威に立ち向かっていく人々を描いた作品です。作者はアルベール・カミュ(Albert Camus)。ノーベル文学賞を受賞したフランスの小説家ですよ。ここで先ほどの「でかいメロンパン」と同じような小話?を一つ。東大のフランス語の授業でのことでした。テキストに登場したCamusを「カマス」と読んでしまった同級生がいたのです。担当の富永教授がさりげなく返しました「君、塩焼きじゃないんだから」と。教室は笑うに笑えない妙な雰囲気に包まれていましたね。話をもとに戻して「古典のすすめ」でした。『デカメロン』を皆さんにお勧めするのは、昭和的な言い方をすると「風紀委員に叱られそう」で、ちょっと躊躇するのですが、『ペスト』はお勧めです!主人公である医師リウーの「こんな考え方はあるいは笑われるかもしれませんが、しかしペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです。…僕の場合には、つまり自分の職務を果すことだと心得ています」という言葉は、今まさに胸に迫ってくるものがありますよ。
新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、わずか数か月ほどの間にパンデミックといわれる世界的な流行となっています。日本でも新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言が政府より発令されました。東京都からは都民に対して「不要不急の外出を控える」といった要請がなされています。小中学生にとっても、友達の家に行くことや屋外で一緒に遊ぶことも、避けるよう求められることになります。「家で過ごそう(Stay Home)」という呼びかけのもと、感染拡大防止のため、通院・食料の買い出しなどといった「生活の維持に必要」な場合を除き、原則として外出を自粛しようということになっています。
「不要不急」という四字熟語を少し考えてみましょう。「不要」は「必要でない」、「不急」は「急ぎではない」、という意味になりますよね。「不要」の反対語は「必要」だとわかりますが、「不急」の反対語はなんでしょうか?「急がなければならない」という意味の熟語ですよね。それは「至急」(非常に急ぐこと)や「火急」(急を要すること)になるでしょう。四字熟語としてはこなれていないのですが、無理やりくっつけると「至急必要」というように「不要不急」の反対語をつくることができるかもしれません。
「家でどうやって過ごせばいいですか?」という相談を受けることも多いのですが、「勉強してください」という回答以外を期待されているのでしょうね(笑)。こんなときには歴史に学びましょう!時は14世紀、場所はイタリアのフィレンツェです。ヨーロッパでは「黒死病」といって恐れられた感染症ペストが蔓延していました。その最中、都会での接触を避けるため、郊外の別荘にこもることにした男女10人がいます。命が脅かされている不安を振り払おうと、10人はそれぞれ毎日1つずつ物語を語り始めます。それが10日間続いて全部で百の物語がつむぎだされるというお話です。ルネサンス期を代表する文学者であるジョヴァンニ・ボッカッチョの著書『デカメロン』の内容になります。「デカメロンって、あれですか?」ききたいことはわかります。日本の各地に「巨大なメロンパン」を販売するパン屋さんが存在しますからね。もちろん「でかい」でも「メロン」でもありませんよ。デカメロンはギリシャ語の「10日」に由来する言葉なのです。
日本に先立って緊急事態宣言が出されたイタリアでは、このボッカッチョの『デカメロン』を読み直してみよう、という動きが広がっています。きっかけは「昔の人達はこんなときどうしていたのだろうか?」という問いかけからだそうです。「全部封鎖されてしまった。どこにも行けない。でも毎日の忙しさの中で、思うようにできなかったことに時間を割くことができる。もしかしたらそんなに悪いことでもないのかもしれない」と、不安の中でもできることを一つずつ始めようとしているイタリアの人たちの声が、インターネット上では聞こえてきます。
皆さんにもぜひ「古典を読む」というチャレンジを始めてほしいと思います。そしてこうした状況の中、世界中で売上げが増加しているという「古典」があることをご存知でしょうか?古典といっても、発表されたのは1947年ですから今から73年前になります。「まるで現在の状況を予言しているかのようだ」と話題になっているその著書のタイトルは『ペスト』といいます。ペストという感染症に翻弄されながらも、その脅威に立ち向かっていく人々を描いた作品です。作者はアルベール・カミュ(Albert Camus)。ノーベル文学賞を受賞したフランスの小説家ですよ。ここで先ほどの「でかいメロンパン」と同じような小話?を一つ。東大のフランス語の授業でのことでした。テキストに登場したCamusを「カマス」と読んでしまった同級生がいたのです。担当の富永教授がさりげなく返しました「君、塩焼きじゃないんだから」と。教室は笑うに笑えない妙な雰囲気に包まれていましたね。話をもとに戻して「古典のすすめ」でした。『デカメロン』を皆さんにお勧めするのは、昭和的な言い方をすると「風紀委員に叱られそう」で、ちょっと躊躇するのですが、『ペスト』はお勧めです!主人公である医師リウーの「こんな考え方はあるいは笑われるかもしれませんが、しかしペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです。…僕の場合には、つまり自分の職務を果すことだと心得ています」という言葉は、今まさに胸に迫ってくるものがありますよ。
| Home |