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 長野県佐久市「ポイ捨て禁止条例」

 小学生が政治を動かした!という事例を紹介したいと思います。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたのを機に、「主権者教育」(政治に参画することを目指した学習)が注目されていますからね。制定をしたのは長野県の佐久市という自治体です。
 内陸県(海に接していない県)の代表ともいえる長野県ですが、その中でも佐久市は「日本で海から一番遠い地点」が存在するところです。気候はもちろん内陸性気候になります。夏と冬、昼と夜の寒暖の差が大きく、降水量が少ないのでしたね。入試によく出る雨温図での区別のポイントは「1・2月の平均気温がマイナスになっている」ところです。その点がグラフの形はよく似ている瀬戸内式気候との大きな違いでした。涼しい気候を利用した高原野菜の栽培が盛んだということも知っていますよね。レタスやセロリは長野県が日本一の生産を誇っています。特に他の地域の出荷が少ない夏のレタスの生産は圧倒的で、東京都中央卸売市場への入荷を独占している状態です。大消費地である東京の需要は、一年を通して変わりませんので、生産者にとってはどのタイミングで作るのかということが重要なのでしたね。
 海に接していないのですから周りはすべて「他の県」ということになりますが、長野県は実に8つの県と接しています。「都道府県を覚えよう!」と学習を始めたころに、長野県を中心にすえて隣接県を上から時計回りに「に・ぐ・さ・や・し・あ・ぎ・と」と呪文のようにして覚えませんでしたか?「新潟・群馬・埼玉・山梨・静岡・愛知・岐阜・富山」の8つですよね。「埼玉県と接しているのですか?!」と驚かないように。
 天気予報では「関東甲信越の明日の天気は」という表現が聞かれますが、甲信越というのは「甲斐・信濃・越後」の頭文字で、それぞれ「山梨・長野・新潟」を指しています。長野県は信州とも呼ばれますよね。これは「信濃の国」の別名です。「信州みそ」や「信州そば」という言葉は耳にしたことがあるでしょう。でも「長野そば」とはいわないのです。長野県にある国立大学も信州大学ですからね。長野県の県庁所在地である長野市は、善光寺の門前町として栄えてきました。県庁所在地の多くが城下町であり、門前町は例外的であることからも注意が必要です。
 さて佐久市の「ポイ捨て禁止条例」です。正式には「佐久市ポイ捨て等防止及び環境美化に関する条例」といいます。平成22年10月に制定されました。罰則規定もありますよ。指導や勧告に従わない悪質な違反者については、氏名が公表され20万円以下の罰金が科されます。条例制定のきっかけとなったのが小学校5年生と2年生の兄弟だったということで注目されました。先ほど「小学生が政治を動かした」と書きましたが、もちろん小学生ですので選挙で投票することはできません。けれども実際に政治に参加することが可能だということを示してみせたのです。通学路のごみが気になった兄弟二人は、一年間にわたって毎月、両親と一緒にごみを拾い続けました。ところがごみは一向に減る気配がありません。特に多かったのがタバコの吸殻です。子どもたちが学校に通う道であるにもかかわらずです。受動喫煙(たばこを吸わない人が、他人のたばこの煙を吸わされること)が、子どもの成長や学力にまで悪影響を及ぼすというデータもあります。このままではいけないと思います!と、兄弟は佐久市にうったえたのでした。「僕たちはたばこの吸い殻を拾いながら『大人が捨てたごみを子どもが拾うなんて、悲しい』と思いました」と。条例をつくってポイ捨てをなくしてほしい!とお願いしたのです。こうした要望のことを「陳情」(ちんじょう)といいます。
 陳情は誰でも自由に自治体や議員などに意見を伝えられる方法なのです。「一体どうやって?」と思うかもしれませんが、皆さんが住んでいる自治体のホームページででも確認してみて下さい。区長や市長への意見や提案を受けつけていますから。このように意見を伝える方法は、日本国憲法の16条で保障された請願権に基づいたものなのです。誰でも国や地方議会などに要望を述べることができるのです。意見に賛成してくれる紹介議員がつくと、陳情は「請願」になります。逆に、議員紹介がないものは陳情として扱われるということでもあります。請願を受理した議会は常任委員会で審査をして、本会議で採択か不採択、継続審議か決めることになります。採択すれば首長に文書送付し、請願内容の実現を求めることになるのです。
 皆さんも、実現してほしい政策を議会へ要望する請願や陳情に挑戦してみてはどうでしょうか!そのためには、自分たちの住んでいる地元のことをよく調べなくてはなりません。交通安全や防災などの課題はないだろうか?しっかりと探ってから請願の内容を考案するのです。これぞまさしく主権者教育だといえますよ。