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2021.12.09
茶どころ日本一条例
静岡県静岡市「めざぜ茶どころ日本一条例」
「お茶といえばどの都道府県をイメージしますか?」というアンケート調査がありました。その結果、実に八割以上の支持を集めた静岡県が、圧倒的な一位となりました。ちなみに二位は京都府、三位は鹿児島県でした。「京都府はわかります。お茶のテレビCMでも登場しますから。でも、どうして鹿児島県が上位にくるのでしょうか?」なんて中学受験生が言わないでくださいよ。茶葉の生産量のランキングでいえば、やはり全国生産量の約四割を占める静岡県が一位なのですが、二位は鹿児島県ですからね。この上位二県で実に七割を占めます。さらにいえば、茶葉の生産ランキングを市町村別にまで細分化すると、なんと一位に輝くのは鹿児島県の南九州市になるのです。「知覧茶(ちらんちゃ)」という南九州市のお茶のブランドは全国に浸透しつつありますからね。お茶をモチーフにしたご当地キャラクターの「お茶むらい」(ちょんまげがお茶の葉っぱになったお侍さん)も活躍中ですよ。
そんな状況の中、静岡県の静岡市では「静岡市のお茶に関する伝統、文化、産業等を守り、静岡市を日本一の茶どころとして育て次代に継承していくため」平成21年4月に「めざせ茶どころ日本一条例」が制定されました。この条例に基づいて「茶どころ日本一計画」が立てられて様々な施策を行います。100年後の将来像として「世界中のだれもがあこがれるお茶のまち」を目指しています。百年計画ですよ!静岡のお茶の情報を広く発信し、日本一の茶どころにふさわしいまちづくりを行い、お茶を中心とした交流を促進するとしています。
ここで注意してほしいのが「めざせ日本一」という点です。今のところ日本一ではないと認めているともいえます。先ほど市町村別では鹿児島県の南九州市が一位だという話をしました。では続く順位に登場するのはどこの自治体でしょうか?二位は牧之原市、三位は島田市となります。いずれも静岡県にあるのですが、肝心の静岡市が見当たりません。生産地というのは、やはり茶葉の育成に適した地理的な条件があるのです。南九州はシラス台地という特徴があります。水はけが良く水持ちが悪いので、あまり稲作には向かないのでしたね。でもサツマイモやお茶の栽培には適しています。そして牧之原市・島田市はともに牧ノ原台地を擁しています。ここには総面積5,000ヘクタールという日本一の広さを誇る牧之原大茶園がありますからね。牧ノ原台地も稲作には不向きな土地でした。明治維新があり、それまで禄(ろく:給料のこと)をもらっていた武士たちが職を失うことになり、そうした無禄士族への対策として、入植をうながし開拓作業が始められたのが牧ノ原台地だったのです。そこに大井川の川越制度廃止で職を失った川越人足たちも加わり、一丸となって開墾が進められました。茶樹を植える事が推奨されたため、現在のような茶畑が広がる製茶地帯になったのでした。島田市の茶園の一角にある牧之原公園には、日本の歴史上お茶に関する重要な人物の像がたてられています。さて、その人物とは誰でしょうか?正解は平安時代末期から鎌倉時代の初期に活躍した栄西です。臨済宗の開祖として知られている栄西は、宋に渡って禅宗を学んでいる際に飲茶が行われているのを見聞して、帰国後に日本初のお茶の専門書「茶は養生の仙薬なり」ではじまる『喫茶養生記』を著しました。これによって禅宗とともに喫茶の習慣が武士階級に広がることとなったのですね。
話をもとに戻して静岡市です。「めざせ日本一!」という発想はどこからきたのでしょうか。実はちゃんと静岡市にもお茶にまつわる日本一があります。それは生産量ではなく消費量です。「緑茶」や「茶類」の一世帯当たりの年間支出金額が日本一なのです!生産量の調査は作物統計調査とよばれ農林水産省の担当です。それに対して消費量の調査は家計調査とよばれ総務省が担当します。この家計調査は毎年注目されていますよね。特に「年間餃子消費量」(一世帯が年間どれだけの量の餃子を購入したか)を激しく争っている栃木県宇都宮市と静岡県浜松市は、もはや宿命のライバルといえるでしょう。
消費量で日本一の静岡市が安心していられないのは、他にもお茶にまつわる条例を制定して様々な施策を打ってくる自治体が次々と現れるからでもあります。お茶といえば?のイメージランキング二位である京都府の宇治市では「宇治茶おもてなし条例」を制定して、お茶をおもてなしに使うことを奨励することで、宇治茶の普及などを目指しています。また大阪府の堺市では、お茶の生産でも消費でもない新しい切り口を示しました。市長は言います「茶の湯は単にお茶をいれて飲むだけでなく、美術、工芸、書画、生け花、お菓子まで、幅広い分野における総合芸術である。そうしたものを生んだ利休のふるさととしての魅力の発信を強化していきたい」と。名付けて「茶の湯条例」の制定を目指しています。安土桃山時代の茶人で、わび茶の大成者として知られる千利休の出身地の堺市が、茶の湯を通じておもてなしの心を広げる条例の制定を目指しているのです。静岡市もうかうかしていられませんよね。
「お茶といえばどの都道府県をイメージしますか?」というアンケート調査がありました。その結果、実に八割以上の支持を集めた静岡県が、圧倒的な一位となりました。ちなみに二位は京都府、三位は鹿児島県でした。「京都府はわかります。お茶のテレビCMでも登場しますから。でも、どうして鹿児島県が上位にくるのでしょうか?」なんて中学受験生が言わないでくださいよ。茶葉の生産量のランキングでいえば、やはり全国生産量の約四割を占める静岡県が一位なのですが、二位は鹿児島県ですからね。この上位二県で実に七割を占めます。さらにいえば、茶葉の生産ランキングを市町村別にまで細分化すると、なんと一位に輝くのは鹿児島県の南九州市になるのです。「知覧茶(ちらんちゃ)」という南九州市のお茶のブランドは全国に浸透しつつありますからね。お茶をモチーフにしたご当地キャラクターの「お茶むらい」(ちょんまげがお茶の葉っぱになったお侍さん)も活躍中ですよ。
そんな状況の中、静岡県の静岡市では「静岡市のお茶に関する伝統、文化、産業等を守り、静岡市を日本一の茶どころとして育て次代に継承していくため」平成21年4月に「めざせ茶どころ日本一条例」が制定されました。この条例に基づいて「茶どころ日本一計画」が立てられて様々な施策を行います。100年後の将来像として「世界中のだれもがあこがれるお茶のまち」を目指しています。百年計画ですよ!静岡のお茶の情報を広く発信し、日本一の茶どころにふさわしいまちづくりを行い、お茶を中心とした交流を促進するとしています。
ここで注意してほしいのが「めざせ日本一」という点です。今のところ日本一ではないと認めているともいえます。先ほど市町村別では鹿児島県の南九州市が一位だという話をしました。では続く順位に登場するのはどこの自治体でしょうか?二位は牧之原市、三位は島田市となります。いずれも静岡県にあるのですが、肝心の静岡市が見当たりません。生産地というのは、やはり茶葉の育成に適した地理的な条件があるのです。南九州はシラス台地という特徴があります。水はけが良く水持ちが悪いので、あまり稲作には向かないのでしたね。でもサツマイモやお茶の栽培には適しています。そして牧之原市・島田市はともに牧ノ原台地を擁しています。ここには総面積5,000ヘクタールという日本一の広さを誇る牧之原大茶園がありますからね。牧ノ原台地も稲作には不向きな土地でした。明治維新があり、それまで禄(ろく:給料のこと)をもらっていた武士たちが職を失うことになり、そうした無禄士族への対策として、入植をうながし開拓作業が始められたのが牧ノ原台地だったのです。そこに大井川の川越制度廃止で職を失った川越人足たちも加わり、一丸となって開墾が進められました。茶樹を植える事が推奨されたため、現在のような茶畑が広がる製茶地帯になったのでした。島田市の茶園の一角にある牧之原公園には、日本の歴史上お茶に関する重要な人物の像がたてられています。さて、その人物とは誰でしょうか?正解は平安時代末期から鎌倉時代の初期に活躍した栄西です。臨済宗の開祖として知られている栄西は、宋に渡って禅宗を学んでいる際に飲茶が行われているのを見聞して、帰国後に日本初のお茶の専門書「茶は養生の仙薬なり」ではじまる『喫茶養生記』を著しました。これによって禅宗とともに喫茶の習慣が武士階級に広がることとなったのですね。
話をもとに戻して静岡市です。「めざせ日本一!」という発想はどこからきたのでしょうか。実はちゃんと静岡市にもお茶にまつわる日本一があります。それは生産量ではなく消費量です。「緑茶」や「茶類」の一世帯当たりの年間支出金額が日本一なのです!生産量の調査は作物統計調査とよばれ農林水産省の担当です。それに対して消費量の調査は家計調査とよばれ総務省が担当します。この家計調査は毎年注目されていますよね。特に「年間餃子消費量」(一世帯が年間どれだけの量の餃子を購入したか)を激しく争っている栃木県宇都宮市と静岡県浜松市は、もはや宿命のライバルといえるでしょう。
消費量で日本一の静岡市が安心していられないのは、他にもお茶にまつわる条例を制定して様々な施策を打ってくる自治体が次々と現れるからでもあります。お茶といえば?のイメージランキング二位である京都府の宇治市では「宇治茶おもてなし条例」を制定して、お茶をおもてなしに使うことを奨励することで、宇治茶の普及などを目指しています。また大阪府の堺市では、お茶の生産でも消費でもない新しい切り口を示しました。市長は言います「茶の湯は単にお茶をいれて飲むだけでなく、美術、工芸、書画、生け花、お菓子まで、幅広い分野における総合芸術である。そうしたものを生んだ利休のふるさととしての魅力の発信を強化していきたい」と。名付けて「茶の湯条例」の制定を目指しています。安土桃山時代の茶人で、わび茶の大成者として知られる千利休の出身地の堺市が、茶の湯を通じておもてなしの心を広げる条例の制定を目指しているのです。静岡市もうかうかしていられませんよね。
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