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2023.02.16
けん玉条例
山形県長井市「けん玉条例」
今回紹介するのは山形県長井市で制定された条例になります。長井市は最上川流域の自治体です。といっても最上川の流域面積は7,040km2で、山形県の面積の約75%を占めています。流路の長さも229kmで、一つの都府県のみを流域とする河川としては日本最長になります。ですから山形県内で「最上川流域の自治体」といっても、多くの自治体がそうですということにしかなりませんよね。では長井市が最上川のどのあたりに位置するのかイメージできますでしょうか?頭の中で山形県の地図を描いてください。人の横顔に見える形ですよね、「鼻」や大きく開けた「口」が特徴的な。その横顔の「目」にあたる部分が庄内平野です。最上川の河口に位置していますよ。そこから上流にさかのぼってみましょう。目から涙を流しているように(流れは逆ですが)見えませんか?新庄盆地で方向を変えて、山形盆地をぬけて、米沢盆地に至ります。長井市は米沢盆地の北に隣接する位置にあるのです。
歴史的にみると、長井は最上川舟運の港町として栄えていました。車も鉄道もない時代、一度にたくさんの荷物を運ぶために利用された交通手段は船です。とりわけ江戸時代には「西廻り海運」と「東廻り海運」で知られる日本各地の港を結ぶ海の航路が開かれて発展しました。天領のあった東北地方の年貢米を将軍の城下町江戸や商業の中心地大坂に運ぶために、4代将軍徳川家綱の時代に整備されたのでしたね。尽力したのが河村瑞賢ですよ。日本海での輸送に活躍した船を北前船ということも覚えておきましょう。最上川河口のまち酒田市の日和山公園には、白い帆が美しい北前船のレプリカが飾られていますよ。日本海に面した一大海運港であった酒田から、最上川を経由して米沢に至る舟運ルートの終着港が長井だったのですね。米沢藩の交易港都市であったといえます。米沢藩の9代藩主である上杉鷹山(名君として知られていますよ。「為せば成る、為さねば成らぬ何事も…」で有名ですよね。)が奨励したことにより発達したのが、この地域の伝統的工芸品である置賜紬(おいたまつむぎ)だということも押えておきましょう。
さて、そんな長井市で制定されたのが「けん玉条例」です。正式な名称は「長井市けん玉を市技に定める条例」になります。令和2年10月1日に施行されました。条文も短いですのでその全文を以下に掲載してみましょう。「けん玉を活用した世界との交流を推進し、けん玉文化の継承を通じて市民の健康づくりや子どもたちの健全育成を図り、けん玉を活かしたまちづくりを推奨するため、けん玉を本市の市技に定める。」になります。「けん玉を長井市の『市技』として定める」というのですが、そもそも「市技」とは何でしょうか?「市を代表する競技」「市の象徴(シンボル)となるような競技」ということでしょう。同様の取り組みとしては、囲碁を市技に定めた広島県尾道市の条例があります。「自治体を象徴する」ということなら、一般的には「市を代表する花」などの自然物がシンボルとして定められる場合が多いといえますね。全国知事会のホームページに各都道府県のシンボルが一覧表で掲載されていますが、47都道府県のシンボルが全てそろっているのは「花」「木」「鳥」くらいになります。一部の県だけなら、「獣」や「魚」や「蝶」などといった例もありますよ。しかしながら、都道府県のレベルでは「技」という項目での指定はありませんでした。やはりめずらしいケースだといえるのでしょう。
ちなみに都道府県の「花」は確認しておくことをおすすめします。例えば、東京都の花は「ソメイヨシノ」(現在の豊島区にあたる染井村で栽培された)です。富山県の花は「チューリップ」(富山県はチューリップの球根の出荷量日本一)です。和歌山県の花は「ウメ」(和歌山県はウメの収穫量日本一)です。「なるほど」と思うものが多いですよね。では山形県の花は何でしょうか?正解は「ベニバナ」です。2021年の2月には、最上川流域の「紅花生産・染色用加工システム」が世界農業遺産(世界的に重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域を国連食糧農業機関が認定する制度)に申請されることが決まりましたよ。すでに日本農業遺産(世界農業遺産の国内版として農林水産省が制定した制度)には認定されています。「紅花システム」は「6次産業化の先駆的な事例」としても注目されていることを覚えておきましょう。「6次産業化」とは何でしょうか?6次というのは、農林水産業本来の1次産業だけでなく、2次産業(工業・製造業)と3次産業(販売業・サービス業)を取り込むことから、「1次産業(生産)」×「2次産業(加工)」×「3次産業(流通・販売)」のかけ算で6次になることを意味しています。農山漁村の経済を豊かにしていく取り組みとして農林水産省は力を入れていますよ。紅花を生産するだけでなく、「紅餅」(摘み取った紅花をすりつぶして発酵させ、丸めて平たく成形し、乾燥させたもの)に加工し、さらには最上川の舟運で集められて、北前船によって京都にまで流通・販売がなされていました。こうした世界的にもめずらしい農業システムが評価の対象となっているのです。
閑話休題、「けん玉条例」ですね。長井市には「競技用けん玉」の生産日本一を誇るメーカーがあります。「競技用」というのは、サイズなど厳格な基準を満たさないと認められないものなのだそうです。全国でもあまり類をみない「市技」として定める条例を制定することによって、「けん玉のまち」としての知名度のアップを図り長井市のPRや観光への誘客も目指しているのです。条例制定の理由を説明する際には、市長自らがけん玉の技を披露しながら「けん玉は集中力を高め、健康維持につながる」とアピールしていましたよ。
今回紹介するのは山形県長井市で制定された条例になります。長井市は最上川流域の自治体です。といっても最上川の流域面積は7,040km2で、山形県の面積の約75%を占めています。流路の長さも229kmで、一つの都府県のみを流域とする河川としては日本最長になります。ですから山形県内で「最上川流域の自治体」といっても、多くの自治体がそうですということにしかなりませんよね。では長井市が最上川のどのあたりに位置するのかイメージできますでしょうか?頭の中で山形県の地図を描いてください。人の横顔に見える形ですよね、「鼻」や大きく開けた「口」が特徴的な。その横顔の「目」にあたる部分が庄内平野です。最上川の河口に位置していますよ。そこから上流にさかのぼってみましょう。目から涙を流しているように(流れは逆ですが)見えませんか?新庄盆地で方向を変えて、山形盆地をぬけて、米沢盆地に至ります。長井市は米沢盆地の北に隣接する位置にあるのです。
歴史的にみると、長井は最上川舟運の港町として栄えていました。車も鉄道もない時代、一度にたくさんの荷物を運ぶために利用された交通手段は船です。とりわけ江戸時代には「西廻り海運」と「東廻り海運」で知られる日本各地の港を結ぶ海の航路が開かれて発展しました。天領のあった東北地方の年貢米を将軍の城下町江戸や商業の中心地大坂に運ぶために、4代将軍徳川家綱の時代に整備されたのでしたね。尽力したのが河村瑞賢ですよ。日本海での輸送に活躍した船を北前船ということも覚えておきましょう。最上川河口のまち酒田市の日和山公園には、白い帆が美しい北前船のレプリカが飾られていますよ。日本海に面した一大海運港であった酒田から、最上川を経由して米沢に至る舟運ルートの終着港が長井だったのですね。米沢藩の交易港都市であったといえます。米沢藩の9代藩主である上杉鷹山(名君として知られていますよ。「為せば成る、為さねば成らぬ何事も…」で有名ですよね。)が奨励したことにより発達したのが、この地域の伝統的工芸品である置賜紬(おいたまつむぎ)だということも押えておきましょう。
さて、そんな長井市で制定されたのが「けん玉条例」です。正式な名称は「長井市けん玉を市技に定める条例」になります。令和2年10月1日に施行されました。条文も短いですのでその全文を以下に掲載してみましょう。「けん玉を活用した世界との交流を推進し、けん玉文化の継承を通じて市民の健康づくりや子どもたちの健全育成を図り、けん玉を活かしたまちづくりを推奨するため、けん玉を本市の市技に定める。」になります。「けん玉を長井市の『市技』として定める」というのですが、そもそも「市技」とは何でしょうか?「市を代表する競技」「市の象徴(シンボル)となるような競技」ということでしょう。同様の取り組みとしては、囲碁を市技に定めた広島県尾道市の条例があります。「自治体を象徴する」ということなら、一般的には「市を代表する花」などの自然物がシンボルとして定められる場合が多いといえますね。全国知事会のホームページに各都道府県のシンボルが一覧表で掲載されていますが、47都道府県のシンボルが全てそろっているのは「花」「木」「鳥」くらいになります。一部の県だけなら、「獣」や「魚」や「蝶」などといった例もありますよ。しかしながら、都道府県のレベルでは「技」という項目での指定はありませんでした。やはりめずらしいケースだといえるのでしょう。
ちなみに都道府県の「花」は確認しておくことをおすすめします。例えば、東京都の花は「ソメイヨシノ」(現在の豊島区にあたる染井村で栽培された)です。富山県の花は「チューリップ」(富山県はチューリップの球根の出荷量日本一)です。和歌山県の花は「ウメ」(和歌山県はウメの収穫量日本一)です。「なるほど」と思うものが多いですよね。では山形県の花は何でしょうか?正解は「ベニバナ」です。2021年の2月には、最上川流域の「紅花生産・染色用加工システム」が世界農業遺産(世界的に重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域を国連食糧農業機関が認定する制度)に申請されることが決まりましたよ。すでに日本農業遺産(世界農業遺産の国内版として農林水産省が制定した制度)には認定されています。「紅花システム」は「6次産業化の先駆的な事例」としても注目されていることを覚えておきましょう。「6次産業化」とは何でしょうか?6次というのは、農林水産業本来の1次産業だけでなく、2次産業(工業・製造業)と3次産業(販売業・サービス業)を取り込むことから、「1次産業(生産)」×「2次産業(加工)」×「3次産業(流通・販売)」のかけ算で6次になることを意味しています。農山漁村の経済を豊かにしていく取り組みとして農林水産省は力を入れていますよ。紅花を生産するだけでなく、「紅餅」(摘み取った紅花をすりつぶして発酵させ、丸めて平たく成形し、乾燥させたもの)に加工し、さらには最上川の舟運で集められて、北前船によって京都にまで流通・販売がなされていました。こうした世界的にもめずらしい農業システムが評価の対象となっているのです。
閑話休題、「けん玉条例」ですね。長井市には「競技用けん玉」の生産日本一を誇るメーカーがあります。「競技用」というのは、サイズなど厳格な基準を満たさないと認められないものなのだそうです。全国でもあまり類をみない「市技」として定める条例を制定することによって、「けん玉のまち」としての知名度のアップを図り長井市のPRや観光への誘客も目指しているのです。条例制定の理由を説明する際には、市長自らがけん玉の技を披露しながら「けん玉は集中力を高め、健康維持につながる」とアピールしていましたよ。
2023.02.13
まんが美術館条例
秋田県横手市「まんが美術館条例」
今回紹介するのは秋田県横手市で制定された条例になります。横手市は秋田県の南東部に位地し、県庁所在地である秋田市に次いで県内二番目の人口を数える都市です。横手盆地の中央部に位置しており、東の奥羽山脈からは横手川(雄物川水系)が市街地に流れてきています。近年では「横手」といえば「横手焼きそば」が有名ですよね。半熟の目玉焼きがトッピングされているスタイルは皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。「安くて美味しい地元で愛されている食べ物」という意味合いの「B級ご当地グルメ」として全国的に知られています。有名という点では「横手かまくら」も忘れてはいけませんよね。毎年2月に開催される伝統行事です。「かまくら」というのは、雪をドーム型に固めて中をくりぬいた「雪室(ゆきむろ)」と呼ばれる小部屋のことです。小部屋といってもドームの高さは3mにもなりますよ。その中に祭壇を設けて水神様をお祀りする行事になります。
雪の多いこの地域ですが、では大雪が降る条件というのは何でしょうか?「気温が低いこと」はもちろんそうなのですが、空気中に含まれている「水蒸気の量が多いこと」が重要になります。その水蒸気がタイミングよく冷やされて、大雪となるのです。実は「水蒸気量が多い」ということと「気温が低い」ということは両立しにくいのです。理科の学習内容ですが、温度が低いと空気中に含むことのできる水蒸気量(飽和水蒸気量)は下がるのでしたよね。冬の日本には大陸から冷たく乾燥した北西の季節風が吹きます。これが日本海を通過する際に、暖かい南の海から流れてくる暖流の対馬海流によって、熱と水蒸気を与えられて雲へと発達するのです。その雲が奥羽山脈にぶつかるようにして高い位置へと運ばれて冷やされ、雪となって降り注ぐことになるのです。
横手市は国から特別豪雪地帯の指定を受けています。これは豪雪地帯対策特別措置法に基づいた指定で「積雪の度が特に高く、かつ、積雪により長期間自動車の交通が途絶する等により住民の生活に著しい支障を生ずる地域」にあたるというのです。さて「特別措置法」とはどういった法律なのでしょうか?法律は国会によって定められ国全体に適用されるものです。ところが、ここでのケースのように「大雪が積もる地域」にだけ適用する必要が出てくる場合があるのです。適用対象が特定され、期間や目的などを限って集中的に対処するために特別に制定される法律を「特別措置法」というのですよ。これに基づいて横手市では「横手市総合雪対策基本計画」が定められています。
また、現在の横手市が舞台となった歴史的な「合戦」も覚えておきましょう。11世紀の平安時代に起きた「後三年合戦」です。当時奥羽二州(陸奥国と出羽国)に勢力を強めていた清原氏の内紛(後継者争い)に、源氏の棟梁である源義家が介入して起こりました。日本の歴史上、古代と中世の分かれ目になるという注目すべき合戦なのです。勝利した清原(藤原)清衡は、その後平泉に移って奥州藤原氏の基礎を築きました。中尊寺金色堂(清衡の建立)を含む平泉の文化遺産は世界文化遺産に登録されていますね。また、この合戦を平定した源義家は結果的に東国武士との主従関係を強化することになり、中世武家社会誕生のきっかけともなったといわれています。
そんな横手市で制定されたのが今回取り上げた「まんが美術館条例」になります。正式名称は「横手市増田まんが美術館設置条例」です。令和2年1月1日に施行されました。「まんが」と「美術館」という結びつきを、皆さんは不思議に思うかもしれませんね。ところが、世界一の来館者数を誇っているパリのルーブル美術館でも「まんが」は重視されているのですよ!なんとルーブル美術館では、建築、彫刻、絵画、音楽、文学、演劇、映画、メディア芸術に次ぐ「第9の芸術」として「まんが」が位置づけられているのです。また、「日本最古のまんが」とも称されている作品はご存知でしょうか?声援をおくるウサギたち、ウサギを投げ飛ばして気を吐くカエル、投げ飛ばされて仰向けにひっくり返るウサギ、それを見て笑い転げるカエルたち。ウサギとカエルが相撲をとっている場面ですよ。紙本墨画の絵巻物で国宝に指定されている「鳥獣人物戯画」になります。動物の息づかいまで伝わってくるようです。東京国立博物館でも公開されていましたよね。
横手市が「まんが美術館」を設置した目的は「市民の文化意識の醸成、マンガ文化の振興並びにマンガ原画の保存及び継承に寄与し、マンガ文化をまちづくりに活用しながら一層の地域活性化を図るため」とあります。そもそものきっかけは、横手市出身の漫画家である矢口高雄さんの偉業を記念するための施設としてのスタートだったのですが、より広く「まんが」をテーマにした美術館としてリニューアルを果たしたのです。リニューアルオープンに寄せて初代名誉館長に就任した矢口高雄さんは次のように発言しています。「世界に類例を見ない大発展を遂げて来た日本のマンガ文化」は「クールジャパンの代表格のように海外の人々から注目されている」と。貴重な「マンガ原画の収蔵」と、その「アーカイブ化」(デジタル化して保存)という事業に、美術館として本格的に取り組むことを漫画家として求めていらっしゃいます。
「クールジャパン」とは「外国人がクール(かっこいい)ととらえる日本の魅力」のことです。国も日本のポップカルチャーを形成してきた文化産業が、海外展開することを支援したり、また人材育成や知的財産の保護などを図ったり、官民一体の事業を展開しています。クールジャパン戦略担当大臣も置かれているのですよ!内閣府にだけ置かれる特命担当大臣です。内閣の重要政策に関する企画立案・総合調整を強力かつ迅速に行うことを使命としています。日本のみならず「まんが」に興味を持つ世界中の人たちが、「まんが美術館」で楽しく鑑賞ができるように、クールジャパン戦略の発展的な継続を望むところです。
今回紹介するのは秋田県横手市で制定された条例になります。横手市は秋田県の南東部に位地し、県庁所在地である秋田市に次いで県内二番目の人口を数える都市です。横手盆地の中央部に位置しており、東の奥羽山脈からは横手川(雄物川水系)が市街地に流れてきています。近年では「横手」といえば「横手焼きそば」が有名ですよね。半熟の目玉焼きがトッピングされているスタイルは皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。「安くて美味しい地元で愛されている食べ物」という意味合いの「B級ご当地グルメ」として全国的に知られています。有名という点では「横手かまくら」も忘れてはいけませんよね。毎年2月に開催される伝統行事です。「かまくら」というのは、雪をドーム型に固めて中をくりぬいた「雪室(ゆきむろ)」と呼ばれる小部屋のことです。小部屋といってもドームの高さは3mにもなりますよ。その中に祭壇を設けて水神様をお祀りする行事になります。
雪の多いこの地域ですが、では大雪が降る条件というのは何でしょうか?「気温が低いこと」はもちろんそうなのですが、空気中に含まれている「水蒸気の量が多いこと」が重要になります。その水蒸気がタイミングよく冷やされて、大雪となるのです。実は「水蒸気量が多い」ということと「気温が低い」ということは両立しにくいのです。理科の学習内容ですが、温度が低いと空気中に含むことのできる水蒸気量(飽和水蒸気量)は下がるのでしたよね。冬の日本には大陸から冷たく乾燥した北西の季節風が吹きます。これが日本海を通過する際に、暖かい南の海から流れてくる暖流の対馬海流によって、熱と水蒸気を与えられて雲へと発達するのです。その雲が奥羽山脈にぶつかるようにして高い位置へと運ばれて冷やされ、雪となって降り注ぐことになるのです。
横手市は国から特別豪雪地帯の指定を受けています。これは豪雪地帯対策特別措置法に基づいた指定で「積雪の度が特に高く、かつ、積雪により長期間自動車の交通が途絶する等により住民の生活に著しい支障を生ずる地域」にあたるというのです。さて「特別措置法」とはどういった法律なのでしょうか?法律は国会によって定められ国全体に適用されるものです。ところが、ここでのケースのように「大雪が積もる地域」にだけ適用する必要が出てくる場合があるのです。適用対象が特定され、期間や目的などを限って集中的に対処するために特別に制定される法律を「特別措置法」というのですよ。これに基づいて横手市では「横手市総合雪対策基本計画」が定められています。
また、現在の横手市が舞台となった歴史的な「合戦」も覚えておきましょう。11世紀の平安時代に起きた「後三年合戦」です。当時奥羽二州(陸奥国と出羽国)に勢力を強めていた清原氏の内紛(後継者争い)に、源氏の棟梁である源義家が介入して起こりました。日本の歴史上、古代と中世の分かれ目になるという注目すべき合戦なのです。勝利した清原(藤原)清衡は、その後平泉に移って奥州藤原氏の基礎を築きました。中尊寺金色堂(清衡の建立)を含む平泉の文化遺産は世界文化遺産に登録されていますね。また、この合戦を平定した源義家は結果的に東国武士との主従関係を強化することになり、中世武家社会誕生のきっかけともなったといわれています。
そんな横手市で制定されたのが今回取り上げた「まんが美術館条例」になります。正式名称は「横手市増田まんが美術館設置条例」です。令和2年1月1日に施行されました。「まんが」と「美術館」という結びつきを、皆さんは不思議に思うかもしれませんね。ところが、世界一の来館者数を誇っているパリのルーブル美術館でも「まんが」は重視されているのですよ!なんとルーブル美術館では、建築、彫刻、絵画、音楽、文学、演劇、映画、メディア芸術に次ぐ「第9の芸術」として「まんが」が位置づけられているのです。また、「日本最古のまんが」とも称されている作品はご存知でしょうか?声援をおくるウサギたち、ウサギを投げ飛ばして気を吐くカエル、投げ飛ばされて仰向けにひっくり返るウサギ、それを見て笑い転げるカエルたち。ウサギとカエルが相撲をとっている場面ですよ。紙本墨画の絵巻物で国宝に指定されている「鳥獣人物戯画」になります。動物の息づかいまで伝わってくるようです。東京国立博物館でも公開されていましたよね。
横手市が「まんが美術館」を設置した目的は「市民の文化意識の醸成、マンガ文化の振興並びにマンガ原画の保存及び継承に寄与し、マンガ文化をまちづくりに活用しながら一層の地域活性化を図るため」とあります。そもそものきっかけは、横手市出身の漫画家である矢口高雄さんの偉業を記念するための施設としてのスタートだったのですが、より広く「まんが」をテーマにした美術館としてリニューアルを果たしたのです。リニューアルオープンに寄せて初代名誉館長に就任した矢口高雄さんは次のように発言しています。「世界に類例を見ない大発展を遂げて来た日本のマンガ文化」は「クールジャパンの代表格のように海外の人々から注目されている」と。貴重な「マンガ原画の収蔵」と、その「アーカイブ化」(デジタル化して保存)という事業に、美術館として本格的に取り組むことを漫画家として求めていらっしゃいます。
「クールジャパン」とは「外国人がクール(かっこいい)ととらえる日本の魅力」のことです。国も日本のポップカルチャーを形成してきた文化産業が、海外展開することを支援したり、また人材育成や知的財産の保護などを図ったり、官民一体の事業を展開しています。クールジャパン戦略担当大臣も置かれているのですよ!内閣府にだけ置かれる特命担当大臣です。内閣の重要政策に関する企画立案・総合調整を強力かつ迅速に行うことを使命としています。日本のみならず「まんが」に興味を持つ世界中の人たちが、「まんが美術館」で楽しく鑑賞ができるように、クールジャパン戦略の発展的な継続を望むところです。
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