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2023.06.07
神出鬼没
「神出鬼没」
「前ぶれもなく突然現れたり、急に消えたりすること」を意味する四字熟語ですね。「しんしゅつきぼつ」と読みますよ。「神のように現れたり、鬼のように消えたりする」というのが、文字通りの意味になりますね。「神」や「鬼」というのは、その所在を確認することが難しいという対象であり、当然その「出没」についても、全く予測がつかないということになります。神様や鬼が登場する日本の昔話が元になっている言葉なのでしょうか?実は日本ではなく、中国の古典に由来する言葉だと言われています。それは『淮南子(えなんじ)』という思想書です。「塞翁が馬」(「人生の運・不運は予測できないものだ」という意味の故事成語)の出典として、聞き覚えのある人もいるでしょう。紀元前の二世紀、前漢の武帝の時代に編纂され、政治や兵学、天文や地理にいたるまで、内容は「百科全書」的なバラエティーに富んだものです。その中の、戦いの策略について述べられた「兵略訓」に「神出鬼行(=神出鬼没)」という言葉が登場してきます。漢文を日本語訳してみると次のようになります。「用兵に長けている者の行動は、神出鬼没である。星が輝くように、天がめぐるように、一挙一動は、前触れもなく、傷跡も残さない。動き出す様は疾風の如く、駆け抜ける様は稲妻の如くである」と。迅速な行動こそが肝要である!と強調しているのですね。
「神出鬼没」と聞くと、私は子どもの頃に観たアニメを思い出します。「神出鬼没の大泥棒!」というセリフとともに、今で言うとグローバルに活躍?する主人公のお話です。世界中の警察が彼を逮捕しようとして血眼になっている、という設定でした。「神出鬼没」も、「血眼」という表現も、このアニメで初めて耳にしたように思います。それを今でも覚えているのですから、「最初の出会い」と言いますか「ファーストインプレッション」は、やはり大事なのだと思いますね。「かっこいいセリフだな」と、子ども心に憧れた感情とともに記憶がよみがえりますから。
これを現在の世界にあてはめると、「グローバルに活躍していて」、その作品を「皆が血眼になって探している」という条件にぴったりと当てはまるアーティストが思い浮かびます。名前を、バンクシー(Banksi)と言います。イギリスを拠点とする素性不明の「路上芸術家」で、もちろん生年月日も未公表の人物です。世界中のストリート、壁、橋などを舞台に、まさに「神出鬼没」の活動を行っています。最近では、ロシアの侵攻が続くウクライナの首都キーウで作品が発表されましたよね。「柔道着姿の相手を投げ飛ばす小さな男の子」が描かれた壁を、ニュースで見た人も多いのではないでしょうか。
ところで「壁に絵を描く」という行為は、人類の芸術の起源だと言えるのではないでしょうか。思い出してください、クロマニョン人と呼ばれる現生人類(ホモ・サピエンス)による「ラスコーの壁画」を。歴史の教科書にも載っていましたよね。フランスのラスコー洞窟で発見された野生動物の絵になります。鋭い観察眼に基づいた表現が駆使され、まるで生きているかのような躍動感に満ちた「作品」ですよね。今から約二万年前に描かれたものだとは思えないほどです。もちろん世界遺産にも登録されていますからね。
さて、「神出鬼没」のバンクシーです。実は東京でも、その作品が発見されているのをご存知でしょうか。2019年1月、東京都港区の東京臨海新交通臨海線(通称「ゆりかもめ」)の日の出駅近くの防潮扉で「1匹のネズミの絵」が見つかりました。トランクケースを持ったネズミが傘を差して、どこか旅行にでもでかけようとする姿を描いた小さな絵になります。実は以前からその場所に描かれていたようなのですが、「1月17日」に突然話題となったのでした。きっかけは、その日に投稿された、小池百合子東京都知事の写真入りのツイッターです。「あのバンクシーの作品かもしれないカワイイねずみの絵が都内にありました!東京への贈り物かも?カバンを持っているようです。」この「つぶやき」を機に、一挙にマスコミの話題となったのでした。
「本当にバンクシーによる作品なのか?」という検証もすすめられました。現時点でも真贋は確定されていないようですが、「おそらく間違いない」という判断です。というのも、バンクシー自身が編集に関わった初期の作品集『Wall and Piece』の中に、この作品の写真が掲載されているからです。「東京2003」とキャプション(写真の説明のための文字情報)もつけられています。東京都のホームページには「公共物への落書きは決して容認できるものではありませんが」と前置きしたうえで、「地元の方々からは…多くの都民が見学できるようにして欲しい旨の要望があり、日の出ふ頭の賑わい向上にも資することから、絵の描かれた防潮扉が設置されていた場所に近い同ふ頭において展示することとしました。」とあります。現在も、日の出ふ頭2号船客待合所で常設展示されていますよ。皆さんも機会があれば、「神出鬼没」の芸術作品を目の当たりにしてみませんか!
「前ぶれもなく突然現れたり、急に消えたりすること」を意味する四字熟語ですね。「しんしゅつきぼつ」と読みますよ。「神のように現れたり、鬼のように消えたりする」というのが、文字通りの意味になりますね。「神」や「鬼」というのは、その所在を確認することが難しいという対象であり、当然その「出没」についても、全く予測がつかないということになります。神様や鬼が登場する日本の昔話が元になっている言葉なのでしょうか?実は日本ではなく、中国の古典に由来する言葉だと言われています。それは『淮南子(えなんじ)』という思想書です。「塞翁が馬」(「人生の運・不運は予測できないものだ」という意味の故事成語)の出典として、聞き覚えのある人もいるでしょう。紀元前の二世紀、前漢の武帝の時代に編纂され、政治や兵学、天文や地理にいたるまで、内容は「百科全書」的なバラエティーに富んだものです。その中の、戦いの策略について述べられた「兵略訓」に「神出鬼行(=神出鬼没)」という言葉が登場してきます。漢文を日本語訳してみると次のようになります。「用兵に長けている者の行動は、神出鬼没である。星が輝くように、天がめぐるように、一挙一動は、前触れもなく、傷跡も残さない。動き出す様は疾風の如く、駆け抜ける様は稲妻の如くである」と。迅速な行動こそが肝要である!と強調しているのですね。
「神出鬼没」と聞くと、私は子どもの頃に観たアニメを思い出します。「神出鬼没の大泥棒!」というセリフとともに、今で言うとグローバルに活躍?する主人公のお話です。世界中の警察が彼を逮捕しようとして血眼になっている、という設定でした。「神出鬼没」も、「血眼」という表現も、このアニメで初めて耳にしたように思います。それを今でも覚えているのですから、「最初の出会い」と言いますか「ファーストインプレッション」は、やはり大事なのだと思いますね。「かっこいいセリフだな」と、子ども心に憧れた感情とともに記憶がよみがえりますから。
これを現在の世界にあてはめると、「グローバルに活躍していて」、その作品を「皆が血眼になって探している」という条件にぴったりと当てはまるアーティストが思い浮かびます。名前を、バンクシー(Banksi)と言います。イギリスを拠点とする素性不明の「路上芸術家」で、もちろん生年月日も未公表の人物です。世界中のストリート、壁、橋などを舞台に、まさに「神出鬼没」の活動を行っています。最近では、ロシアの侵攻が続くウクライナの首都キーウで作品が発表されましたよね。「柔道着姿の相手を投げ飛ばす小さな男の子」が描かれた壁を、ニュースで見た人も多いのではないでしょうか。
ところで「壁に絵を描く」という行為は、人類の芸術の起源だと言えるのではないでしょうか。思い出してください、クロマニョン人と呼ばれる現生人類(ホモ・サピエンス)による「ラスコーの壁画」を。歴史の教科書にも載っていましたよね。フランスのラスコー洞窟で発見された野生動物の絵になります。鋭い観察眼に基づいた表現が駆使され、まるで生きているかのような躍動感に満ちた「作品」ですよね。今から約二万年前に描かれたものだとは思えないほどです。もちろん世界遺産にも登録されていますからね。
さて、「神出鬼没」のバンクシーです。実は東京でも、その作品が発見されているのをご存知でしょうか。2019年1月、東京都港区の東京臨海新交通臨海線(通称「ゆりかもめ」)の日の出駅近くの防潮扉で「1匹のネズミの絵」が見つかりました。トランクケースを持ったネズミが傘を差して、どこか旅行にでもでかけようとする姿を描いた小さな絵になります。実は以前からその場所に描かれていたようなのですが、「1月17日」に突然話題となったのでした。きっかけは、その日に投稿された、小池百合子東京都知事の写真入りのツイッターです。「あのバンクシーの作品かもしれないカワイイねずみの絵が都内にありました!東京への贈り物かも?カバンを持っているようです。」この「つぶやき」を機に、一挙にマスコミの話題となったのでした。
「本当にバンクシーによる作品なのか?」という検証もすすめられました。現時点でも真贋は確定されていないようですが、「おそらく間違いない」という判断です。というのも、バンクシー自身が編集に関わった初期の作品集『Wall and Piece』の中に、この作品の写真が掲載されているからです。「東京2003」とキャプション(写真の説明のための文字情報)もつけられています。東京都のホームページには「公共物への落書きは決して容認できるものではありませんが」と前置きしたうえで、「地元の方々からは…多くの都民が見学できるようにして欲しい旨の要望があり、日の出ふ頭の賑わい向上にも資することから、絵の描かれた防潮扉が設置されていた場所に近い同ふ頭において展示することとしました。」とあります。現在も、日の出ふ頭2号船客待合所で常設展示されていますよ。皆さんも機会があれば、「神出鬼没」の芸術作品を目の当たりにしてみませんか!
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