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 滋賀県草津市「愛する地球条例」

 今回ご紹介するのは滋賀県草津市で制定された条例になります。草津と聞くと「温泉」と反応してしまう生徒が多いのはしかたがないことでしょうね。「日本三名泉」というくくりで古くは室町時代から書物にも記されているのは、兵庫県の有馬温泉と岐阜県の下呂温泉と群馬県の草津温泉ですからね。とりわけ「草津よいとこ一度はおいで」ではじまる民謡が、「湯もみ」(高温の湯を板でかき回して適温にする動作)の際に声を合わせて歌われることもあり、草津の湯の知名度は抜群です。それでも中学受験生ともなれば、滋賀県の草津についても、その歴史的な意味について理解しておかなくてはならないですよ。
 江戸幕府が整備した五街道は全部言えますよね?東海道・中山道・日光道中・奥州道中・甲州道中の五つ。その全ての起点となるのが江戸の日本橋です。現在の東京都中央区になります。国の重要文化財にも指定されている日本橋周辺ですが、上空を首都高速道路に覆われていて、せっかくの景観が損なわれていると言われていました。しかしいよいよ、首都高を地下に移して日本橋周辺をもう一度「首都の顔」として再生させよう!というプロジェクトが動き始めましたよ。起点はどれも日本橋だという五街道ですが、終点はそれぞれ違うのかといえば、二つの街道は共通しています。東海道と中山道です。南回りで太平洋沿岸経由の東海道、北回りで内陸経由の中山道、ともに江戸と京都を結んでいます。現在の都道府県で通過経路を示してみると次のようになりますよ。東海道は、東京都・神奈川県・静岡県・愛知県・三重県・滋賀県・京都府。中山道は、東京都・埼玉県・群馬県・長野県・岐阜県・滋賀県・京都府。お気づきでしょうか?京都に到着する前に、滋賀で合流していることに!滋賀の草津宿こそ、東海道と中山道の合流地点なのです。
 日本橋から同じく京都に向かう街道でありながら、東海道と中山道では全く反対の方向に足を踏み出すことになります。現在の国道でいえば、東海道は国道1号を、中山道は国道17号を進むわけですからね。それぞれの最初の宿場が品川宿と板橋宿になることも覚えておきましょう。そして草津宿は、東海道の52番目、中山道の68番目に位置する宿場となるのです。ちなみに国道17号は東京大学の前を通るのですが、その区間は本郷通りと呼ばれています。加賀百万石で有名な前田家の金沢藩は参勤交代に際して中山道を利用していました。ですから、金沢藩の江戸上屋敷は本郷にあり、下屋敷は板橋にあったのです。今でも残る本郷東大の赤門(これも重要文化財です)は、その上屋敷の門だったのですよ。
 さてさて、滋賀県について語るならば、面積の約六分の一を占める琵琶湖の存在を忘れることはできません。貯水量は27・5㎦にもなります。琵琶湖に流れ込む川は多数(大小合わせて460本)ありますが、流れ出る川はただ一つ。瀬田川です。その水は京都では宇治川に、大阪では淀川となって流れていきます。滋賀県だけではなく京都府・大阪府・兵庫県でも利用される水道用水として、近畿圏の約1,400万人の貴重な水資源となっているのです。このことを指して琵琶湖を「近畿の水がめ」と表現することがあるのですが、当の滋賀県ではこの「水がめ」という言い方をしりぞけています。いわく「琵琶湖はただ水を貯める機能しかもたない甕(かめ)ではない。琵琶湖の周りや流入河川域の人々の努力により水質や水量が保たれており、大勢の人々が琵琶湖に強い思い入れを持ち、琵琶湖に依って生活している」と。もっともな話です。かつて琵琶湖は赤潮に悩まされていました。洗濯用の合成洗剤に含まれていたリン酸塩が、生活排水とともに琵琶湖に流れ込み、富栄養化をおこしてプランクトンが異常発生したのでした。そこで1979年に滋賀県では「琵琶湖富栄養化防止条例」を制定しました。これはリンを含む家庭用の合成洗剤について滋賀県内では使用することも、販売することも、贈与することも禁止した画期的なものでした。全国的にも大きな波紋を投げかけ、洗剤メーカーはすぐに無リン洗剤を開発することになりました。現在日本で販売されている家庭用洗剤はほとんど全て、リン酸塩を含まない無リン洗剤になっています。
 そんな環境問題にはとりわけ熱心な滋賀県は草津市で、平成19年に制定されたのが「愛する地球のために約束する草津市条例」です。前文は次のようにはじまります。「春、子どもたちが入学式を迎える頃、市内には桜の花はどこにも咲いていません。夏、せみの鳴き声が、変わりました。秋、琵琶湖のまわりでは、お米の収穫量が減りました。冬、琵琶湖に渡り鳥が、やってこなくなりました。私たちがこのまま今までのような生活を続けていくかぎり、このような光景を目にすることになるでしょう。今こそ、私たち人間は、地球上の生あるすべての中の一員として、限りなく持続可能な共生を続けていくために、何を行わなければならないのか真剣に考え、行動することが求められています。」なんと詩的で格調の高い宣言でしょうか!
 1997年に世界中から161もの国々が参加して開催された地球温暖化防止京都会議。温室効果ガスの排出削減目標などが定められた京都議定書が採択されたことから、京都市は独自の取り組みとして「京都市地球温暖化対策条例」を平成16年に制定しました。これを契機に、全国の地方自治体で「地球温暖化対策条例」が制定されるようになったのですが、環境問題の先進県である滋賀県の草津市で、温暖化を防いで愛する地球を守ろう!という条例が施行されたのは当然の流れだったといえるでしょう。
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