fc2ブログ
2022.06.27 かずの子条例
北海道留萌市「かずの子条例」

  今回紹介するのは北海道留萌市で制定された条例です。留萌市は北海道の北西部に位置し、ニシン漁とともに発展し、日本一の生産量を誇る「かずの子」をはじめとした水産加工業のまちです。おや、すでに今回の条例のテーマがとび出してきましたね!でもあわてずに。北海道の「北西部」といっても、北海道は広いですよね。頭の中に「このあたり」とイメージできますでしょうか?北緯は43度、東経は141度あたりになります、といっても位置は特定できませんか(笑)。水産加工業のまちというのですから海に面しているはずですよね。ではどの海でしょうか?北海道は三つの海に囲まれていますからね。日本海とオホーツク海と太平洋です。北西部というのですから当然、日本海に面したまちになりますよ。東西を流れる留萌川を中心に、西には日本海、南北には暑寒別天売焼尻国定公園が連なります。さて、この国定公園の名称を読むことができますでしょうか?「しょかんべつてうりやぎしりこくていこうえん」ですからね。難問クイズに登場しそうです。晴れた日には、遠く利尻の島影が夕陽の輝く日本海に浮かぶ姿が見られ、風光明媚なまちとしても有名なのですよ。
 お正月のおせち料理になくてはならないものとして「かずの子」はみなさんご存知ですよね。地方によっておせち料理の中身は違ったりするのですが、かずの子は関東でも関西でも共通に含まれる具材になります。「祝い肴(いわいざかな)」と呼ばれる、お祝いの席に欠かせない料理の一つなのです。おせち料理は、それぞれにおめでたい意味が込められていますが、この祝い肴は他の料理よりも先に食べるという習わしがあるくらい重要になります。その中身は、関東では「黒豆」「かずの子」「田作り」、関西では「黒豆もしくは田作り」「かずの子」「たたきごぼう」が選ばれます。いずれにせよ、かずの子は外せないのです!そのかずの子ですが、ニシンの卵ですからね。ニシンは漢字で「二親」と当てることができ、さらには非常に多くの卵を持つことから、「たくさんの子どもに恵まれますように」「我が家が代々栄えますように」という願いをこめておせち料理に使われるのです。
 おせち料理ですが、和食が世界遺産(ユネスコ無形文化遺産)に登録されるにあたって、きわめて重要な役割を果たしたことをご存知でしょうか。世界の各都市で和食がブームになっています。日本の食文化が世界的に認められている。だからこそ世界遺産に!という思いがあったのですが、そうした商業的な成功がかえって「無形文化遺産で保護する必要はないのではないか」という理屈にもつながってしまっていたのです。そのときに日本側が主張した例が「正月におせち料理を食べるという文化」だったのです。今現在、おせち料理を自分で作っている家庭はどんどん減ってきています。これが何世代かたつうちに、もしかしたらなくなってしまうかもしれません。日本の伝統的な食文化が失われつつあるという危機感を表明することで「これは確かに無形文化遺産として保護する必要がある」という専門家の意見を引き出したのでした!
 さて水産加工業のまち留萌市の原点は、明治時代にはじまったニシン漁になります。ここで問題です。ニシン漁は漁業の種類でいえば沿岸漁業・沖合漁業・遠洋漁業のどれにあたるでしょうか?正解は沿岸漁業です。イワシ・サンマ・サバ・アジといった漁獲物が中心の沖合漁業とも、マグロやカツオといった漁獲物が中心の遠洋漁業とも違って、そもそもニシンは産卵のために沿岸の浅いところに大群で押し寄せてくるのです。漁獲されたニシンの大部分は肥料としての漁粕、保存食品としての干しかずの子、身欠ニシンなどに加工され、北前船によって本州方面へ出荷されていました。以後昭和29年に浜からニシンが消えてしまうまで長く続くことになります。「消えてしまった?」そう、まさにニシンは消えたように姿を見せなくなりました。その理由にはいくつかの説があり要因は複合的です。けれども要因の一つとして間違いなく挙げられるのが乱獲による減少です。産卵のために日本海にやってきたニシンを獲れるだけ獲っていたのですから。漁獲制限もありませんでした。ニシンが子孫を残せないほど減少してしまったということでしょう。ではニシンが獲れなくなってからかずの子はどうしたのでしょう。留萌市ではいち早く、ロシア、カナダ、アメリカなどから冷凍ニシンや原卵を輸入し、伝統あるニシン加工の技術を活かす方向にかじを切ったのでした。その結果「全国一の生産量と品質を誇る留萌のかずの子」は維持されることになったのです。
 そんな留萌市で議員提出議案として出された「かずの子条例」が、平成28年9月に可決されました。かずの子の消費拡大と地産地消の推進、地域経済の活性化、郷土愛の醸成などを目的としたもので、おせち料理だけでなくふだんから地元の味に親しんでもらおうと、学校給食にもかずの子が提供されるようになりました。漁業を通じた地域の再生を目指しているのです。
かつて世界一を誇った我が国の漁業生産量は、今やピーク時の半分以下に減少しています。そうした中、国でも2018年の末に、70年ぶりとなる魚漁法の改正が実現しました。漁業は世界的には成長産業であるといわれています。にもかかわらず日本の漁業は停滞傾向にあるのです。可決された改正漁業法を通じて、早獲り競争で量を追い求める漁業から質を求める資源管理型漁業へと日本の漁業を転換し、漁業資源の回復や漁業関係者の収益改善を図り、成長戦略の一環として日本の漁業の再生を目指していくことになりましたよ
Secret

TrackBackURL
→http://toshikane.blog75.fc2.com/tb.php/62-f9f48cbf