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 秋田県横手市「まんが美術館条例」

 今回紹介するのは秋田県横手市で制定された条例になります。横手市は秋田県の南東部に位地し、県庁所在地である秋田市に次いで県内二番目の人口を数える都市です。横手盆地の中央部に位置しており、東の奥羽山脈からは横手川(雄物川水系)が市街地に流れてきています。近年では「横手」といえば「横手焼きそば」が有名ですよね。半熟の目玉焼きがトッピングされているスタイルは皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。「安くて美味しい地元で愛されている食べ物」という意味合いの「B級ご当地グルメ」として全国的に知られています。有名という点では「横手かまくら」も忘れてはいけませんよね。毎年2月に開催される伝統行事です。「かまくら」というのは、雪をドーム型に固めて中をくりぬいた「雪室(ゆきむろ)」と呼ばれる小部屋のことです。小部屋といってもドームの高さは3mにもなりますよ。その中に祭壇を設けて水神様をお祀りする行事になります。
 雪の多いこの地域ですが、では大雪が降る条件というのは何でしょうか?「気温が低いこと」はもちろんそうなのですが、空気中に含まれている「水蒸気の量が多いこと」が重要になります。その水蒸気がタイミングよく冷やされて、大雪となるのです。実は「水蒸気量が多い」ということと「気温が低い」ということは両立しにくいのです。理科の学習内容ですが、温度が低いと空気中に含むことのできる水蒸気量(飽和水蒸気量)は下がるのでしたよね。冬の日本には大陸から冷たく乾燥した北西の季節風が吹きます。これが日本海を通過する際に、暖かい南の海から流れてくる暖流の対馬海流によって、熱と水蒸気を与えられて雲へと発達するのです。その雲が奥羽山脈にぶつかるようにして高い位置へと運ばれて冷やされ、雪となって降り注ぐことになるのです。
 横手市は国から特別豪雪地帯の指定を受けています。これは豪雪地帯対策特別措置法に基づいた指定で「積雪の度が特に高く、かつ、積雪により長期間自動車の交通が途絶する等により住民の生活に著しい支障を生ずる地域」にあたるというのです。さて「特別措置法」とはどういった法律なのでしょうか?法律は国会によって定められ国全体に適用されるものです。ところが、ここでのケースのように「大雪が積もる地域」にだけ適用する必要が出てくる場合があるのです。適用対象が特定され、期間や目的などを限って集中的に対処するために特別に制定される法律を「特別措置法」というのですよ。これに基づいて横手市では「横手市総合雪対策基本計画」が定められています。
 また、現在の横手市が舞台となった歴史的な「合戦」も覚えておきましょう。11世紀の平安時代に起きた「後三年合戦」です。当時奥羽二州(陸奥国と出羽国)に勢力を強めていた清原氏の内紛(後継者争い)に、源氏の棟梁である源義家が介入して起こりました。日本の歴史上、古代と中世の分かれ目になるという注目すべき合戦なのです。勝利した清原(藤原)清衡は、その後平泉に移って奥州藤原氏の基礎を築きました。中尊寺金色堂(清衡の建立)を含む平泉の文化遺産は世界文化遺産に登録されていますね。また、この合戦を平定した源義家は結果的に東国武士との主従関係を強化することになり、中世武家社会誕生のきっかけともなったといわれています。
 そんな横手市で制定されたのが今回取り上げた「まんが美術館条例」になります。正式名称は「横手市増田まんが美術館設置条例」です。令和2年1月1日に施行されました。「まんが」と「美術館」という結びつきを、皆さんは不思議に思うかもしれませんね。ところが、世界一の来館者数を誇っているパリのルーブル美術館でも「まんが」は重視されているのですよ!なんとルーブル美術館では、建築、彫刻、絵画、音楽、文学、演劇、映画、メディア芸術に次ぐ「第9の芸術」として「まんが」が位置づけられているのです。また、「日本最古のまんが」とも称されている作品はご存知でしょうか?声援をおくるウサギたち、ウサギを投げ飛ばして気を吐くカエル、投げ飛ばされて仰向けにひっくり返るウサギ、それを見て笑い転げるカエルたち。ウサギとカエルが相撲をとっている場面ですよ。紙本墨画の絵巻物で国宝に指定されている「鳥獣人物戯画」になります。動物の息づかいまで伝わってくるようです。東京国立博物館でも公開されていましたよね。
 横手市が「まんが美術館」を設置した目的は「市民の文化意識の醸成、マンガ文化の振興並びにマンガ原画の保存及び継承に寄与し、マンガ文化をまちづくりに活用しながら一層の地域活性化を図るため」とあります。そもそものきっかけは、横手市出身の漫画家である矢口高雄さんの偉業を記念するための施設としてのスタートだったのですが、より広く「まんが」をテーマにした美術館としてリニューアルを果たしたのです。リニューアルオープンに寄せて初代名誉館長に就任した矢口高雄さんは次のように発言しています。「世界に類例を見ない大発展を遂げて来た日本のマンガ文化」は「クールジャパンの代表格のように海外の人々から注目されている」と。貴重な「マンガ原画の収蔵」と、その「アーカイブ化」(デジタル化して保存)という事業に、美術館として本格的に取り組むことを漫画家として求めていらっしゃいます。
 「クールジャパン」とは「外国人がクール(かっこいい)ととらえる日本の魅力」のことです。国も日本のポップカルチャーを形成してきた文化産業が、海外展開することを支援したり、また人材育成や知的財産の保護などを図ったり、官民一体の事業を展開しています。クールジャパン戦略担当大臣も置かれているのですよ!内閣府にだけ置かれる特命担当大臣です。内閣の重要政策に関する企画立案・総合調整を強力かつ迅速に行うことを使命としています。日本のみならず「まんが」に興味を持つ世界中の人たちが、「まんが美術館」で楽しく鑑賞ができるように、クールジャパン戦略の発展的な継続を望むところです。
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