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 和歌山県海南市「お菓子のはじまり条例」

 オリンピック期間中も東京では四度目となる緊急事態宣言が出されており、「無観客」の中で競技が行われていました。東京都は「お家で見よう!」とステイホームでの観戦を呼びかけていましたね。夏休み中だった皆さんも、テレビの前で選手たちを応援したことでしょう。外出を控えてお家の中で生活をしようとすると、どうなると思いますか?「家から出ずに生活する際に必要になるもの」を多くの人が求めることになります。これを「巣ごもり需要」といいますよ。この影響で「過去最高益」を更新した企業もあるのです。思いつきますか?お家にこもって趣味を楽しむ時間が増えたことから、「ゲーム・音楽のコンテンツ事業」が好調でした。また、通信販売などでお家への配達を希望する人たちが増えたため、「宅配事業」も好調でした。こうした経済の動きにも注意しておいてくださいね。皆さんにも身近な例をあげると、「手作りお菓子」の材料が、巣ごもり需要の影響で品薄状態になったといわれていますね。具体的にはホットケーキミックスやデザートの素といった製品になります。作る前の状態では保存もきき、家族で一緒に楽しく作るという「お家時間」の過ごし方が、需要を押し上げたようです。
 皆さんは「水菓子」と聞くと何を思い浮べるでしょうか。「夏にぴったりの涼しげなお菓子のことです!」と、ゼリーや水ようかんなどをイメージするかもしれませんね。「水分の多いお菓子」という意味で。でもそれは「生菓子」というのが正式な呼び名になります。正式というのは「法律にもとづいて」ということですよ。「出来上がり直後において水分四○%以上を含有する菓子類」というものが食品衛生法上の「生菓子」の定義となります。「何にでも法律は関係してくるのですね!」という理解は正しいです。日常生活のあらゆる場面において、常に法律との関わりはあるものだと心得ておきましょう。「食品衛生法」は、所管する厚生労働省によると「飲食による健康被害の発生を防止するための法律」ということになります。ちなみに2018年に15年ぶりに改正されたこの食品衛生法は、2021年の6月までに「完全施行」となり、全ての食品事業者にはHACCP(ハサップ)と呼ばれる科学的な根拠に基づく衛生管理が求められることになりましたよ。
 さて「水菓子」についてでした。辞書を引いてみてください。「果物、フルーツ」と出てきますから。このことが今回取り上げた「条例」に深く関わってくることになります。和歌山県海南市で制定された「お菓子のはじまり条例」です。
 正式には「海南市お菓子の振興に関する条例」といいます。2018年の12月に施行されました。条文には次のようにあります。「本市は『お菓子の発祥の地』といえるのである」と。だからこそ「お菓子に関する伝統文化の理解を深め、郷土愛の醸成を図るとともに、地域経済の発展及び地域の振興を図るため」この条例を制定するのである、と。では「お菓子の発祥の地」とはどういうことでしょうか。さらに条文をみてみましょう。「果物は水菓子といわれるように、古くは、菓子と果物とは、意味の違いはなかったものとされる。本市は、みかん、ビワ、桃等の果物の産地としても知られるところであり、日本で最初に植えられた果物の実が先人達の努力により大いに発展し、現在に至っている。これらのことから、本市は『お菓子の発祥の地』といえるのである。」  どうやら「日本で最初に果物が植えられた」のが海南市であるようです。一体どういうことでしょうか?
 海南市は和歌山県の北西部に位置する市です。北は和歌山市、南は有田市に隣接し、西は紀伊水道に面しています。温暖な気候に恵まれ、山の頂上近くまで耕された段々畑は柑橘栽培に向き、昔から盛んにみかんが栽培されていました。リアス式海岸の天然の良港である下津港からみかんを各地に運んでいたのです。この下津港にはある石碑が立てられています。江戸時代の元禄期(1688年~1704年)に活躍した豪商、紀伊国屋文左衛門の顕彰碑です。荒れ狂う海の中を、決死の覚悟で江戸までみかんを運び、大きな利益を得たエピソードで知られていますよね。「沖の暗いのに白帆がみえる、あれは紀州のみかん船」と俗謡にうたわれました。紀州、和歌山とみかんの結びつきは強く、農林水産省が行っている「作物統計調査」によると、2020年産のみかん収穫量が多い都道府県は、1位「和歌山県」、2位「静岡県」、3位「愛媛県」となりました。上位3つの都道府県で約50%のみかんが生産されていることになりますよ。では、海南市の条例がいう「果物」は、江戸時代にさかのぼるのでしょうか。いえいえ、「お菓子のはじまり」はさらに古いのです。
 日本初の国家による歴史書である「日本書紀」が編纂されたのは、今から1300年前の養老四年(720年)のことでした。先に作られた「古事記」とは異なり、当時の国際語である漢文体を採用し、「紀」と呼ばれる時系列で表記する編年体で書かれていることから、「日本」という国号とともに対外的なアピールを狙ったものとされています。「古事記」のなかに「日本」という名称は出てきませんからね。その「日本書紀」に登場する「田道間守(たじまもり)」が、今回の条例の主人公なのです。第11代垂仁天皇の命により、田道間守が中国に渡り、不老長寿の霊果として橘(たちばな)の木を持ち帰ったと記されています。そして橘が初めて移植されたのが「六本樹の丘」と呼ばれた海南市にある場所なのです。橘は、みかんの原種であるとともに「菓子」の起源とされ、田道間守は、お菓子の神様として崇められるようにもなりました。そんなエピソードから、海南市は「みかん・お菓子発祥の地」を標榜しているのです。「お菓子の聖地となるように官民一体となって地域を盛り上げていきたい!」と意気込んでいますよ。
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