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 岡山県総社市「ひきこもり支援宣言」

 今回取り上げるのは岡山県総社市の市長さんが提唱した宣言です。令和元年の8月26日に「全国ひきこもり支援基礎自治体サミット」が総社市で開催され、群馬県安中市長と愛知県豊明市長と滋賀県守山市長と山口県宇部市長と岡山県総社市長の5名による共同宣言が発表されました。「ひきこもり支援基礎自治体宣言書」にそろって署名したのです。そこには「わたしたちは、すべての人々に寄り添う自治体となることを目指し、家族会、当事者の会、福祉関係者とともに、ひきこもり支援に果敢に取り組むことを宣言します」と記されています。呼びかけ人である総社市の片岡聡一市長に直接お会いしてお話を伺う機会がありましたので、宣言の意図もふくめて皆さんに紹介してみたいと思います。
 さて、岡山県総社市といって、具体的に思い浮かぶものがありますでしょうか?首都圏に在住する皆さんにとって「中国地方」というのはイメージしにくいところかもしれませんね。近畿圏に在住する小学生が「関東甲信越」といわれてもピンとこないように、普段から接している情報にはどうしても地域差がありますから。それでも最近は岡山県のPR大使も務める人気お笑い芸人さんがテレビで活躍していますので、「岡山弁」を耳にしたこともあるのではないでしょうか。「おかやま晴れの国大使」として岡山県の魅力を発信していますよ。「晴れの国」というのは、温暖少雨で晴天に恵まれた瀬戸内式気候に属する岡山県のイメージなのです。
 総社市は岡山県南西部の内陸に位置しています。東は岡山市と、南では倉敷市とも接していますよ。北から南を貫いて流れている高梁川は、岡山県の流域面積第1位となる一級河川で、吉備高原を通って流れてきます。「吉備」というのは現在でも岡山県の通称とされ、この地方は古代から吉備国として栄えていました。「吉備という語感がたまらなく好きである」と言っていたのは作家の司馬遼太郎さんで、岡山のことを「桃太郎の末裔たちの国」とも表現しています。吉備団子といえば岡山県の郷土菓子ですよね。桃太郎に登場することでも有名です。この童話「桃太郎」の原型となった「鬼退治伝説」が、吉備では伝えられてきたのです。「古代、吉備には温羅(うら)という鬼がいました。温羅は鬼城山を居城として村人を襲い、悪事を重ねていました。そこで、大和の王は吉備津彦命に温羅を退治するよう命じました。吉備津彦命は、吉備の中山に陣を構え、巨石の楯を築き守りを固め、一方、温羅も城から弓矢で迎え撃ちます。そして激しい戦いの末、傷を負った温羅は鯉に化けて逃走し、吉備津彦命は鵜に変身して温羅を捕まえ退治しました。」この伝説の舞台となっているのが、総社市に点在する史跡群なのです。「古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語」として「桃太郎伝説の生まれたまち おかやま」が日本遺産に認定されたのは平成30年5月のことです。日本遺産というのは、地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本文化や伝統を語る「ストーリー(物語)」を文化庁が認定する制度で、さまざまな文化財を国内外に発信することで地域の活性化を図ることを目的としています。これまで保存を重視してきた文化財を、活用することに力点を置いた制度なのですよ。
 ちなみに総社市では、買い物や通院のために出かけるときに電話予約をすると、ワンボックスカーが自宅などに迎えに来てくれて希望する目的地まで送ってくれるという公共の乗り物があります。その名も「雪舟くん」です。なぜ雪舟かというと、室町時代に水墨画を文化の域にまで大成させた、雪舟の生誕の地が総社市だからです。お寺で修業をしていた雪舟が、絵ばかり描くのでしかられて、柱にしばりつけられて泣いていたときに、それでも足の指を使って涙でネズミの絵を描いていたという話は有名ですよね。その逸話が残るのも、総社市にある宝福寺なのです。
 閑話休題、「ひきこもり支援宣言」です。「8050問題」という言葉をご存知でしょうか。80代の親が50代の子どもの生活を支えているという問題です。背景にあるのは子どもの「ひきこもり」です。ひきこもりという言葉が社会に広がりはじめた頃は「若者の問題」とされていました。それから約30年が経過して、当時の若者が50代に、その親が80代となり、ひきこもりの長期化と高齢化が進んでいます。この「8050問題」に取り組む先進自治体の一つが、平成29年に「ひきこもり支援センター」を開設した総社市なのです。
 「小中学校時代の不登校は市の担当、高校生のひきこもりは県の担当、社会人のひきこもりは国の担当なんていう縦割りでは対応できない」と、片岡市長はおっしゃいます。ひきこもりの定義が「義務教育終了後であって、おおむね6ヶ月間以上、社会から孤立した状態にある」というのでは、義務教育期間を担当する市の役割が限られてしまいます。厚生労働省がひきこもり支援として打ち出した生活困窮者自立支援制度も、就労支援の側面が強く、支援の条件に当てはまらない人たちには行き届かないこともあります。住民に最も身近な基礎自治体が、ひきこもりの窓口にならなくては「すべての人々に寄り添う」ことはかないません。「制度の狭間に入りこんでしまい、自ら支援を求めることが難しい人を、支援につなげることこそ政治の役割だ」と、片岡市長はおっしゃいます。地域共生社会の実現に向けて、社会のひずみに光を当てることが、社会全体に安心感を広げることにもなるはずである、という信念が感じられましたよ。
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