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2023.04.09
そうめん条例
奈良県桜井市「そうめん条例」
奈良県といえば通称「海なし県」として知られる「内陸県」(海岸線を持たない県)の一つです。日本国内には8つありますが、奈良県は他の7つの県と切り離されていますよね。本州の中央に並んでいる7つの県は、群馬県・埼玉県・栃木県・山梨県・長野県・岐阜県・滋賀県で、ひとかたまりになって接していますが、奈良県だけは日本最大である紀伊半島の中にポツンと存在しています。この「海なし県」には有名な覚え方がありますので、ご存じの生徒さんも多いと思いますが確認しておきましょう。「グサッとヤナギしなる」ですね。関東地方の群馬(グんま)・埼玉(サいたま)・栃木(トちぎ)、中部地方の山梨(ヤまなし)・長野(ナがの)・岐阜(ギふ)、近畿地方の滋賀(シが)・奈良(ナら)の順で覚えることができるという優れものです。
ではここで問題です。「海なし県」が8つあるとすれば、「漁港がない県」も8つあると考えますよね。海に面している都道府県には必ず漁港がありますから。でも「漁港なし県」は7つなのです。さてどういうことでしょうか?正解は「滋賀県には琵琶湖で営まれている漁業のための漁港が20もあるから」ということになります。琵琶湖の扱いは大変興味深く、漁業法における農林水産大臣の指定では「海面」に含まれることになります。また、河川法における国土交通大臣の指定では、一級「河川」ということにもなっているのです。ですから、湖とも海ともまた川とも言える特別な存在というわけなのですよ。もう一つおまけの問題です。「海なし県」の8つには、海がありませんので当然、島もないと考えたくなりますが、実は3つの県には島があります。これはどういうことでしょうか?琵琶湖がヒントになりますよね。そう、「湖にうかぶ島」があるのです。長野県の野尻湖には琵琶島(びわじま)が、山梨県の河口湖には鵜の島(うのしま)が、滋賀県の琵琶湖には、沖島(おきしま)・竹生島(ちくぶしま)・多景島 (たけしま)がありますからね。
さて奈良県の桜井市です。桜井市は、奈良県内の多くの支川(実に157本!)を集めて大阪湾へと注いでいる大和川の上流に位置しています。大和川の源流が桜井市の笠置山地になります。古事記の中で「倭(やまと)は国(くに)のまほろば」とうたわれた地域にあたり、桜井市にある三輪山周辺がその中心地だとされています。「まほろば」というのは「素晴らしいところ」という意味の古い日本の言葉です。JR西日本の桜井駅を通る路線は「万葉まほろば線」という名称がつけられていますからね。6世紀の末に推古天皇が飛鳥(奈良県明日香村)に皇居を移してから始まるのが、いわゆる「飛鳥時代」になりますが、それ以前(「古墳時代」という区分がされることもあります)、古代国家の成立という歴史の舞台となっていたのが、この「やまと」なのです。「やまと」の大王(おおきみ)を中心とする豪族たちの連合政権が形作られていたと考えられていますよね。氏姓制度という仕組みになります。
そんな奈良県の桜井市で制定されたのが「そうめん条例」なのです。2017年7月7日、七夕の日に施行されました。正式には「三輪素麺の普及の促進に関する条例」になります。そうめん発祥の地は「三輪そうめん」で知られている、ここ奈良県桜井市の三輪地方だといわれており、そこから兵庫県の「播州そうめん」、香川県の「小豆島そうめん」へと製法が伝わったとされているのです。3つの産地は現在「日本三大そうめん」と呼ばれています。この呼び名は2019年開成中学の社会の入試問題にも登場していて、そこから「小豆島」に結びつける理解が求められましたよ。
さて条例にはこうあります。「三輪素麺は、現在から1200年余り前、飢饉に苦しむ民を救うため、保存食として小麦を挽いて棒状に練り乾燥させたものが時を経て…」とその発祥を語り、続いて「公卿(くぎょう:朝廷に仕える高官)の日記や女官たちの手記によると平安時代以降、宮中や貴族の間で、七夕に食する風習があったとされている」と、歴史的な背景についても説明されています。条例の文言の中にここまで詳しく解説がなされるというのはめずらしいことです。続けて「そのような中、三輪素麺は、本市の優れた地域資源として、桜井市地域ブランドに認定され、更に、他とは違い手延べによる細く白い優れた品質を保持し、国が地域特有のブランドとして保護する『地理的表示保護制度』の登録も受けたところである。このような古い歴史をもつ三輪素麺を積極的にPRし普及するために、三輪素麺を食する習慣を広め、伝統文化への理解の促進及び本市の地域経済の活性化を図るため、この条例を制定する」とあるのです。
「地理的表示保護制度」というのは、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(地理的表示法)に基づき、特定の産地と結びつきのある産品の名称(これを「地理的表示」といいます)を知的財産として保護することを目的としています。農林水産省が、生産業者の利益の増進と、需要者の信頼を確保するために、進めているのです。産地偽装を防ぎ、模倣品を排除するためでもあります。「三輪素麺」の他にも「夕張メロン」や「越前がに」や「神戸ビーフ」などが登録されています。
2018年には、桜井市で「全国そうめんサミット2018inそうめん発祥の地三輪」が開催されています。実行委員会大会会長である松井正剛桜井市長は「日本の麺文化の歴史は1200年以上になる。豊かな自然風土に育まれ、全国に産地がある。それが一堂に会するサミットを開催できたことは意義深い」と語っていますよ。
奈良県といえば通称「海なし県」として知られる「内陸県」(海岸線を持たない県)の一つです。日本国内には8つありますが、奈良県は他の7つの県と切り離されていますよね。本州の中央に並んでいる7つの県は、群馬県・埼玉県・栃木県・山梨県・長野県・岐阜県・滋賀県で、ひとかたまりになって接していますが、奈良県だけは日本最大である紀伊半島の中にポツンと存在しています。この「海なし県」には有名な覚え方がありますので、ご存じの生徒さんも多いと思いますが確認しておきましょう。「グサッとヤナギしなる」ですね。関東地方の群馬(グんま)・埼玉(サいたま)・栃木(トちぎ)、中部地方の山梨(ヤまなし)・長野(ナがの)・岐阜(ギふ)、近畿地方の滋賀(シが)・奈良(ナら)の順で覚えることができるという優れものです。
ではここで問題です。「海なし県」が8つあるとすれば、「漁港がない県」も8つあると考えますよね。海に面している都道府県には必ず漁港がありますから。でも「漁港なし県」は7つなのです。さてどういうことでしょうか?正解は「滋賀県には琵琶湖で営まれている漁業のための漁港が20もあるから」ということになります。琵琶湖の扱いは大変興味深く、漁業法における農林水産大臣の指定では「海面」に含まれることになります。また、河川法における国土交通大臣の指定では、一級「河川」ということにもなっているのです。ですから、湖とも海ともまた川とも言える特別な存在というわけなのですよ。もう一つおまけの問題です。「海なし県」の8つには、海がありませんので当然、島もないと考えたくなりますが、実は3つの県には島があります。これはどういうことでしょうか?琵琶湖がヒントになりますよね。そう、「湖にうかぶ島」があるのです。長野県の野尻湖には琵琶島(びわじま)が、山梨県の河口湖には鵜の島(うのしま)が、滋賀県の琵琶湖には、沖島(おきしま)・竹生島(ちくぶしま)・多景島 (たけしま)がありますからね。
さて奈良県の桜井市です。桜井市は、奈良県内の多くの支川(実に157本!)を集めて大阪湾へと注いでいる大和川の上流に位置しています。大和川の源流が桜井市の笠置山地になります。古事記の中で「倭(やまと)は国(くに)のまほろば」とうたわれた地域にあたり、桜井市にある三輪山周辺がその中心地だとされています。「まほろば」というのは「素晴らしいところ」という意味の古い日本の言葉です。JR西日本の桜井駅を通る路線は「万葉まほろば線」という名称がつけられていますからね。6世紀の末に推古天皇が飛鳥(奈良県明日香村)に皇居を移してから始まるのが、いわゆる「飛鳥時代」になりますが、それ以前(「古墳時代」という区分がされることもあります)、古代国家の成立という歴史の舞台となっていたのが、この「やまと」なのです。「やまと」の大王(おおきみ)を中心とする豪族たちの連合政権が形作られていたと考えられていますよね。氏姓制度という仕組みになります。
そんな奈良県の桜井市で制定されたのが「そうめん条例」なのです。2017年7月7日、七夕の日に施行されました。正式には「三輪素麺の普及の促進に関する条例」になります。そうめん発祥の地は「三輪そうめん」で知られている、ここ奈良県桜井市の三輪地方だといわれており、そこから兵庫県の「播州そうめん」、香川県の「小豆島そうめん」へと製法が伝わったとされているのです。3つの産地は現在「日本三大そうめん」と呼ばれています。この呼び名は2019年開成中学の社会の入試問題にも登場していて、そこから「小豆島」に結びつける理解が求められましたよ。
さて条例にはこうあります。「三輪素麺は、現在から1200年余り前、飢饉に苦しむ民を救うため、保存食として小麦を挽いて棒状に練り乾燥させたものが時を経て…」とその発祥を語り、続いて「公卿(くぎょう:朝廷に仕える高官)の日記や女官たちの手記によると平安時代以降、宮中や貴族の間で、七夕に食する風習があったとされている」と、歴史的な背景についても説明されています。条例の文言の中にここまで詳しく解説がなされるというのはめずらしいことです。続けて「そのような中、三輪素麺は、本市の優れた地域資源として、桜井市地域ブランドに認定され、更に、他とは違い手延べによる細く白い優れた品質を保持し、国が地域特有のブランドとして保護する『地理的表示保護制度』の登録も受けたところである。このような古い歴史をもつ三輪素麺を積極的にPRし普及するために、三輪素麺を食する習慣を広め、伝統文化への理解の促進及び本市の地域経済の活性化を図るため、この条例を制定する」とあるのです。
「地理的表示保護制度」というのは、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(地理的表示法)に基づき、特定の産地と結びつきのある産品の名称(これを「地理的表示」といいます)を知的財産として保護することを目的としています。農林水産省が、生産業者の利益の増進と、需要者の信頼を確保するために、進めているのです。産地偽装を防ぎ、模倣品を排除するためでもあります。「三輪素麺」の他にも「夕張メロン」や「越前がに」や「神戸ビーフ」などが登録されています。
2018年には、桜井市で「全国そうめんサミット2018inそうめん発祥の地三輪」が開催されています。実行委員会大会会長である松井正剛桜井市長は「日本の麺文化の歴史は1200年以上になる。豊かな自然風土に育まれ、全国に産地がある。それが一堂に会するサミットを開催できたことは意義深い」と語っていますよ。
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