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2023.05.22
長寿命化
「長寿命化」
中学校PTAの皆さんと懇談をする機会がありました。中学生のお子さんを抱えている保護者の皆さんですから、「子育て」のキャリアも優に十年は超えていらっしゃいます。お話を進めていると「体に無理が利かなくなってきましたよ」といった、お互いの年齢に相応した話題が、ちらほらと出てくるのです。「関節の可動域がどんどん狭まってきましたよね」(いわゆる「四十肩・五十肩」という症状です。)だとか、「いくら寝ても疲れが取れませんよね」(いわゆる「慢性疲労」という症状です。)だといった、体調をめぐって「いつもどこかがよくない」という話で盛り上がったりしてしまうのです。「腰が痛い」というのも「胃がもたれる」というのも、それはもう日常茶飯事なのです。ですからCMでも毎日流れてくるのが「痛みに効く」だったり「すっきり爽快」などといったフレーズですよね。世の中にはどれほど不具合を抱えている大人が多いのか、中学生の皆さんにも分かるというものでしょう。
それでも大人は、「老朽化」などないかのように、日々仕事をこなしています。もちろん深刻な症状が出てからでは遅いので、健康状態には気をつけているということは大前提です。その上で、体調には波があり、毎日が常にベストの状態であるということは、そもそも「有難い」(めったにない)ことなのだと大人は知っているのです。仕事に関してもそうです。常に順調で何のトラブルもない、ということの方がむしろ例外的なのだと知っています。うまくいくこともありますが、思うようにならないことが次々と続いて、ひっきりなしに調整することを余儀なくされたりするものです。でもそれが普通なのです。人間の行動には、ある意味「不具合」が生じてしまうものだ、という認識が必要なのです。それを「不具合をおそれて行動をおこさない」という判断をしてしまうのは、本末転倒というべきです。たとえ不具合がおきたとしても、「タイミングよく問題が顕在化した」と捉えて、どう対処すればよいかを考えて前進した方がより現実的なのですね。
ところがこの処世術(社会をうまく生きていくためのスキル)めいた大人の行動様式に「反発」や「軽蔑」を感じてしまうのが、思春期真っ盛りの中学生なのですね。「こうあるべきだ」という理想を掲げて行動をおこしたのに、それにそぐわない事態が生じてしまうと、「それならば行動すべきではない」という判断を下してしまうという傾向ですね。もっと日常的な例で言うと、「思ったようにできないならば、やらないほうがましだ!」と考えてしまうわけです。大人であれば「妥協しながらでも続けることに意義がある」と思うのですが、「全てをリセット」したほうが潔いと考えるのです。「ゼロから作り直そう!」と。確かにこの「スクラップ・アンド・ビルド」(解体と構築)という行動様式は、青春時代の特権ともいえます。「続けることに意味がある」などという大人の常識にとらわれず、「解体しては構築し直す」という発想で、次々と新しいことにチャレンジしていくことも、「自分のやり方」を確立するまでは、とても重要になるからです。長い間の取り組みを通じて既に形骸化してしまったといえるものでも、大胆にスクラップすることが難しくなるのが大人の立場の弱点ですから。
しかし、では何でも「スクラップ・アンド・ビルド」で!ということになるかというと、もちろんそうではありません。身近な話を紹介しましょう。皆さんが通っている学校の話です。日本の多くの学校施設は、昭和の時代、とりわけ人口増加と都市化の進展した「高度経済成長期」に、盛んに建てられてきました。当時は「建設ラッシュ」とも呼ばれていましたよ。それから50年を経て、学校施設では老朽化対策が大きな課題となっています。しかも「では取り壊して、新しく作り直せばいい」という単純な話にはならないのです。近年、環境保全の観点から様々な分野で「SDGs」がスローガンとして掲げられており、「持続可能性」が追求されています。建設の分野も例外ではありません。既存の建物をメンテナンスしながら永続的に使い続けるという取り組みが実施されています。これが「建て替え」ではない「長寿命化」の考え方です。施設は経年により老朽化します。これは避けられないことです。また、施設に求められる機能も時代とともに変化します。状況に応じた組み換えは必須になります。そうした中で、老朽化した施設を将来にわたって長く使い続けるため、単に物理的な不具合を直すだけではなく、建物の機能や性能を現在の学校が求められている水準にまで引き上げることを「長寿命化」改修と呼ぶのです。
学校施設は未来を担う子供たちが集い、生き生きと学び、生活をする場です。また地域住民にとっては、非常災害時には避難生活のよりどころとしての重要な役割を果たします。文部科学省では「長寿命化」を推進するため、長寿命化改修の事例集や計画策定のマニュアルなどを公表しています。単なる補修や改修ではなく、長寿命化と同時に時代の進展に応じた施設の改善が可能になるのだと、積極的に後押ししていますよ。アクティブ・ラーニングなどの学習形態の多様化に対応した多目的スペースを整備したり、バリアフリー化を図ったり、子どもたちに不人気のトイレ環境を改善したりと、さまざまな工夫を取れ入れている自治体が事例集では紹介されていますよ。
中学校PTAの皆さんと懇談をする機会がありました。中学生のお子さんを抱えている保護者の皆さんですから、「子育て」のキャリアも優に十年は超えていらっしゃいます。お話を進めていると「体に無理が利かなくなってきましたよ」といった、お互いの年齢に相応した話題が、ちらほらと出てくるのです。「関節の可動域がどんどん狭まってきましたよね」(いわゆる「四十肩・五十肩」という症状です。)だとか、「いくら寝ても疲れが取れませんよね」(いわゆる「慢性疲労」という症状です。)だといった、体調をめぐって「いつもどこかがよくない」という話で盛り上がったりしてしまうのです。「腰が痛い」というのも「胃がもたれる」というのも、それはもう日常茶飯事なのです。ですからCMでも毎日流れてくるのが「痛みに効く」だったり「すっきり爽快」などといったフレーズですよね。世の中にはどれほど不具合を抱えている大人が多いのか、中学生の皆さんにも分かるというものでしょう。
それでも大人は、「老朽化」などないかのように、日々仕事をこなしています。もちろん深刻な症状が出てからでは遅いので、健康状態には気をつけているということは大前提です。その上で、体調には波があり、毎日が常にベストの状態であるということは、そもそも「有難い」(めったにない)ことなのだと大人は知っているのです。仕事に関してもそうです。常に順調で何のトラブルもない、ということの方がむしろ例外的なのだと知っています。うまくいくこともありますが、思うようにならないことが次々と続いて、ひっきりなしに調整することを余儀なくされたりするものです。でもそれが普通なのです。人間の行動には、ある意味「不具合」が生じてしまうものだ、という認識が必要なのです。それを「不具合をおそれて行動をおこさない」という判断をしてしまうのは、本末転倒というべきです。たとえ不具合がおきたとしても、「タイミングよく問題が顕在化した」と捉えて、どう対処すればよいかを考えて前進した方がより現実的なのですね。
ところがこの処世術(社会をうまく生きていくためのスキル)めいた大人の行動様式に「反発」や「軽蔑」を感じてしまうのが、思春期真っ盛りの中学生なのですね。「こうあるべきだ」という理想を掲げて行動をおこしたのに、それにそぐわない事態が生じてしまうと、「それならば行動すべきではない」という判断を下してしまうという傾向ですね。もっと日常的な例で言うと、「思ったようにできないならば、やらないほうがましだ!」と考えてしまうわけです。大人であれば「妥協しながらでも続けることに意義がある」と思うのですが、「全てをリセット」したほうが潔いと考えるのです。「ゼロから作り直そう!」と。確かにこの「スクラップ・アンド・ビルド」(解体と構築)という行動様式は、青春時代の特権ともいえます。「続けることに意味がある」などという大人の常識にとらわれず、「解体しては構築し直す」という発想で、次々と新しいことにチャレンジしていくことも、「自分のやり方」を確立するまでは、とても重要になるからです。長い間の取り組みを通じて既に形骸化してしまったといえるものでも、大胆にスクラップすることが難しくなるのが大人の立場の弱点ですから。
しかし、では何でも「スクラップ・アンド・ビルド」で!ということになるかというと、もちろんそうではありません。身近な話を紹介しましょう。皆さんが通っている学校の話です。日本の多くの学校施設は、昭和の時代、とりわけ人口増加と都市化の進展した「高度経済成長期」に、盛んに建てられてきました。当時は「建設ラッシュ」とも呼ばれていましたよ。それから50年を経て、学校施設では老朽化対策が大きな課題となっています。しかも「では取り壊して、新しく作り直せばいい」という単純な話にはならないのです。近年、環境保全の観点から様々な分野で「SDGs」がスローガンとして掲げられており、「持続可能性」が追求されています。建設の分野も例外ではありません。既存の建物をメンテナンスしながら永続的に使い続けるという取り組みが実施されています。これが「建て替え」ではない「長寿命化」の考え方です。施設は経年により老朽化します。これは避けられないことです。また、施設に求められる機能も時代とともに変化します。状況に応じた組み換えは必須になります。そうした中で、老朽化した施設を将来にわたって長く使い続けるため、単に物理的な不具合を直すだけではなく、建物の機能や性能を現在の学校が求められている水準にまで引き上げることを「長寿命化」改修と呼ぶのです。
学校施設は未来を担う子供たちが集い、生き生きと学び、生活をする場です。また地域住民にとっては、非常災害時には避難生活のよりどころとしての重要な役割を果たします。文部科学省では「長寿命化」を推進するため、長寿命化改修の事例集や計画策定のマニュアルなどを公表しています。単なる補修や改修ではなく、長寿命化と同時に時代の進展に応じた施設の改善が可能になるのだと、積極的に後押ししていますよ。アクティブ・ラーニングなどの学習形態の多様化に対応した多目的スペースを整備したり、バリアフリー化を図ったり、子どもたちに不人気のトイレ環境を改善したりと、さまざまな工夫を取れ入れている自治体が事例集では紹介されていますよ。
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