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2024.01.30 市民主役条例
 福井県鯖江市「市民が主役のまちづくり条例」

 今回紹介するのは福井県鯖江市で制定された条例です。首都圏在住の皆さんが福井県の鯖江市に行こうと思ったら、公共交通機関は何を使って向かうことになるでしょう。太平洋側から日本海側への移動ですので、飛行機を使うべきでしょうか?それとも北陸に属する県ですから、北陸新幹線を使うとよいのでしょうか?どちらも3時間台で、東京からなら鯖江まで到着できますよ。飛行機でしたら、羽田から小松空港まで飛びます。でも小松空港は福井県ではなく、石川県にありますからね。残念ながら福井県には航空路線の定期便が飛んでいる空港がないのです。小松空港からは、バスなどで小松駅に向かい、そこから北陸本線の特急「しらさぎ」号(名古屋行)に乗り込んで、鯖江まで進むことになります。北陸新幹線を使うなら、東京駅から「かがやき」号(金沢行)に乗り、終点の金沢から北陸本線に乗り換えて特急「サンダーバード」号(大阪行)を使えば、鯖江に着きますよ。2023年度末のスタートを目指している北陸新幹線の金沢・敦賀間の延伸プロジェクトが完了すれば、福井駅が開業することになりますので、もっと時間は短縮されるでしょうね。でも現時点において、最も短時間で、東京から鯖江に到着できるのは、東海道新幹線を利用したルートなのです。東京駅から「のぞみ」号で名古屋まで乗り、「ひかり」号に乗り換えて、米原まで進みます。そこから北陸本線の特急「しらさぎ」号(金沢行)を使って鯖江に到着するのですね。
 さて鯖江市のイメージキャラクターをご存じでしょうか。「ちかもんくん」という名前の「文化系癒しキャラクター」(鯖江市のホームページより)が活動していますよ。「ちかもん」を漢字で書くとするならば「近門」になるでしょうか。井原西鶴、松尾芭蕉とともに元禄文化を代表する、浄瑠璃・歌舞伎作者「近松門左衛門」のことなのです。近松は鯖江で生まれたのですね。「近松のまち さばえ」として、市はPRに努めていますよ。「劇作家として大成するうえで、幼少期を過ごした鯖江の豊かな自然や人情は、彼の生み出した作品に大きく影響したことと思います」と、鯖江市はアピールしています。
 もう一つ「〇〇のまち さばえ」というキャッチコピーがあります。それは「めがねのまち さばえ」です。眼鏡フレームの国内生産シェアの、実に9割以上を誇っているのです。鯖江市における眼鏡フレーム製造の歴史は、明治期にさかのぼります。農業が中心の土地であった鯖江ですが、冬になると雪に埋もれてしまうのです。日本海側気候の特徴ですね。この農閑期の冬場に安定収入を得る方策として、当時眼鏡作りが盛んであった大阪から職人を招いて、眼鏡の製造技術を伝えてもらったことが始まりだといわれています。実に1世紀以上の歴史があるわけですね。けれども「伝統的工芸品」には指定されていません。なぜなら、伝統的工芸品の指定を受けるための「要件」を満たさない部分があるからです。それは、「伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること」という点ですね。プラスチック(セルロイド)や、現在はチタンででも製造されている眼鏡フレームですから。同じ北陸工業地域に属し、ノーベル賞の晩餐会で使用されることでも有名な、新潟県燕市の洋食器(スプーンやフォークなど)も、同様に伝統的工芸品には指定されていませんよね。さらに同様に、国内シェアも9割以上を誇っているんですよ。北陸にはこうした「地場産業」が発達しています。「伝統的な原材料」でこそありませんが、「一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの」という伝統的工芸品の要件にはぴったりの産業なのです。眼鏡フレームの製作には、多いもので200以上の工程が必要になります。専門工程ごとに分業が行われて生産されるため、関連する「眼鏡産業」に従事する人の数も多く、鯖江市の人口の約1割が携わっているという統計もあります。
 そんな鯖江市で、2010年(平成22年)4月1日に、「自分たちのまちは自分たちがつくるという市民主役のまちづくり」を進めることを目的とした「市民主役条例」が施行されました。「市民一人ひとりの前向きな小さな声を集め建設的な大きな声とすることにより、思いを一つにし」と条文にあります。この「市民一人ひとりの前向きな小さな声」をかたちにしようとしたのが「鯖江市役所JK課」(JK=女子高生)というユニークなプロジェクトなのです。これまで、市役所や公共サービスに直接関わることの少なかった市民である地元の女子高校生たちが、主役となって柔軟な視点で自分たちのまちを楽しく面白くしていくための新しい企画やアイディアを出していこう!というものです。そしてこの活動に刺激を受けて、なんと新たに「鯖江市OC課」(OC=おばちゃん)も立ち上がりましたよ。
 鯖江市を含む福井県は「共働き率全国1位、女性就業率全国2位」という、国勢調査に基づく集計結果が出ています。この理由が、先ほど確認した歴史的な産業構造によって説明されることがあります。すなわち「眼鏡産業」といった基幹となる地場産業に、女性が家の近くで働き手として活躍するケースが多く見られたからだ、と。さらには、母親が働く姿を見てきた子どもたちにも、「自分も大きくなったら働きたい」という価値観が根づいたのでは、と説明されるのです。「市民が主役」といった場合に、「女子高生」や「おばちゃん」という女性たちが注目されるのも、こうした背景があるのかもしれません。この「市民参加による住民自治や新しいまちづくり」を進めてきたことが評価されて、鯖江市は総務省から「ふるさとづくり大賞」を表彰されていますよ。
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